世界的な流行が続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ感染症)だが、この記事では喫煙との関係について述べる(2020/03/08時点の情報です)。

■上がる感染症リスク

 喫煙は、肺を初めとする呼吸器や全身の免疫系に悪影響を与える(※1)。つまり、タバコを吸うことでウイルスなどの病原菌に感染しやすくなるということだ。

 また、喫煙によって呼吸器疾患が重症化し、治りにくくなることも明らかだ。また、受動喫煙でも同じことが起きる(※2)。

 喫煙による免疫系への悪影響に、タバコ製品に含まれるニコチンが関与することが知られている(※3)。

 これは、ニコチンがドーパミンなどのカテコールアミンや副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド)の分泌をうながし、免疫系の生体防御システムに影響を与えて感染に対する防御能力を抑制するからではないかと考えられている。加熱式タバコにもニコチンが含まれているので、同じような悪影響があるのは確かだろう。

■専門家も指摘

 新型コロナ感染症のリスクは、50歳以上、心臓病、肺疾患、がん、免疫の異常や弱体化、糖尿病にかかっている人で高くなることがわかっている。

 では、喫煙との関係はどうだろうか。

 実は、ここにきて世界各地の専門家から、新型コロナ感染症にかかりやすく重篤化しやすい因子として喫煙があげられ始めている。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のスタントン・A・グランツ博士は同校のホームページで、タバコをやめることによって新型コロナ感染症によって引き起こされる重篤な肺疾患のリスクを減らすことができるとコメントした。

 グランツ博士はタバコ問題の専門家として有名な研究者だが、こうコメントしたのには理由がある。

 中国の「Chinese Medical Journal」という医学雑誌に2020年2月28日に投稿された論文(※4)によれば、2019年12月30日から2020年1月15日まで武漢の3つの病院に入院した新型コロナ感染症による肺炎患者78人の症状を死亡を含む悪化と改善・安定で比較したところ、喫煙歴のある患者は約14倍(OR)も高く悪化したという。

 また、権威のある医学雑誌『THE LANCET』の「Oncology」に掲載された中国における新型コロナ感染症とがん患者の関係についての論文(※5)に対する3月3日の投稿(※6)では、喫煙は新型コロナウイルスが侵入する受容体(ACE2)の発現を著しく増加させ、同時にいわゆる「タバコ肺」と呼ばれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が新型コロナ感染症を重篤化させる独立した因子だと指摘している。

 つまり、喫煙者は新型コロナウイルスに感染しやすくなり、喫煙によって痛めつけられた肺は新型コロナ感染症でさらにダメージを受け、治りにくくなるということだ。

続きはソースで

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20200309-00166777/