12/18(水) 7:11配信
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「全くもって不思議」と地質学者、隕石衝突の研究者が偶然見つける

 46億年前に太陽系ができてほどなく、まだ若かった月に隕石が衝突し、直径1000キロメートルの「危機盆地」が形成された。衝突が正確にいつ起きたかはわからない。しかし、科学者たちはこの盆地を調べることで、何十年も取り組んできたより大きな謎を解こうとしている。それは、初期の月や地球に隕石が激しく降り注ぐ時期があったのかどうかという謎だ。

 最近、危機盆地の中に、できた当時のままの「衝突溶融岩石」を含むクレーターが発見されたという。衝突溶融岩石は、隕石が衝突した瞬間の熱で生成されるため、衝突の古さを知る決定的な証拠になる。将来、宇宙飛行士かロボットがサンプルを持ち帰り、年代を知ることができれば、初めて生命が誕生した原初の地球で何が起きていたかが明らかになるかもしれない。

 おまけに、もう一つ興味深い謎が見つかった。危機盆地には先ほどのクレーターに加え、東京23区より少し小さいくらいの膨らみがある。調査チームによると、これは火山岩の塊で、地下の特異なマグマの活動によって膨れ上がって割れたとみているが、そのようなマグマ活動は今のところ説明がつかないという。太陽系の中に、同様のものは他に見当たらない。研究成果は学術誌「Journal of Geophysical Research: Planets」に掲載される。

「全くもって不思議です」と話すのは、米ノートルダム大学で月の地質学を専門とするクライブ・ニール氏だ。氏は今回の調査には関わっていない。
巨大衝突はいつ起こったか

 地球に隕石が衝突した痕跡はあまり残っていない。風化作用やプレートの移動で消えてしまうからだ。対照的に、空気がなく地質活動も少ない月では、何十億年分ものクレーターが重なり合って残っている。これは、地球への衝突に関する間接的な記録を月が残してくれているということだ。

 大昔の地球に何が起こっていたかを知ることは、生命の起源を探る研究者たちにとって重要な問題の一つだ。最古の化石の年代をめぐる議論はいまだに決着が付いていないが、最古とされる化石の多くがおよそ35億〜42億8000万年前のものと言われている。悩ましいことに、これまでに月から得られた証拠によれば、ちょうどこの頃、地球に太陽系形成の残り物である隕石が雨あられと降っていたとされる。

 米国のアポロ計画や旧ソ連の無人探査計画では、地球に近い側の月の表面にある盆地やクレーターから岩石のサンプルを持ち帰り、研究者たちがそれらから様々な衝突の年代を推定してきた。その年代は38億〜40億年前に特に集中し、突出して衝突が増えた時期があったことが示唆された。のちにこの数億年間は「後期重爆撃期」と呼ばれるようになった。

 しかし、最近の研究によって、こうした盆地の年代に疑問が呈されるようになった。これらの岩石は元々の起源が不明瞭であり、一部はどこかの盆地から飛び出して別の盆地に移動したのではないかと考えられている。これでは正確な年代を割り出せない。そのうえ、アポロ計画時代のサンプルが示唆するように39億年前に衝突が頻発したというなら、太陽系の形成後に7億年近くも静かな時期があったことの説明が難しい。

「後期重爆撃期の実在性が次第にあやしくなっている今、巨大な衝突跡が本当に同じような時期に形成されたのかどうかを調べることは必須です」と米ノースカロライナ州立大学の惑星科学者ポール・バーン氏は話す。なお氏は今回の研究には関わっていない。

 たしかに39億年前頃のものだろうと科学者の意見が一致しているのは「雨の海」だけだ、と米サウスウエスト研究所の惑星科学者で小惑星の専門家、ビル・ボトケ氏は説明する。氏も今回の調査には関わっていない。後期重爆撃期が実在したかどうかを知るには、衝突溶融岩石を調べ、より正確に盆地の年代を割り出すほかない。そこで重要になるのが危機盆地だ。

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