高齢ゾウほど交尾に積極的、50代はフル回転、研究 生殖行動に駆り立てられる「マスト期」に全エネルギーを集中
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/070400390/
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2019/7/5
NATIONAL GEOGRAPHIC

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 高さ3メートル余り、体重6トンを超すアフリカゾウ「マット」は、地球上で最大級の動物だ。厚い皮膚を持つこのオスは、52歳という年齢にもかかわらず、今も驚くほどのエネルギーを交尾に費やしている。

 6月24日付けで学術誌「Journal of Animal Ecology」に発表された新たな研究によれば、むしろマットのような高齢のオスは、メスを探し出して交尾することに若いオスよりずっと多くの労力をつぎ込んでいることがわかった。

 マットは、ケニアのサンブル国立保護区とバッファロー・スプリングス国立保護区にかけて分布する個体群の一員であり、1年のうち約3カ月間、生殖行動に駆り立てられる。生物学者が「マスト」と呼ぶ状態だ。マストの間、中年から高齢のオスのゾウは食事や休息にほとんど時間を割かず、可能な限り多くのメスと交尾しようと、サバンナを歩き回る。メスは母系集団で生活しており、オスはマスト期に入るまで別のグループで暮らすことが多い。

「マスト期のオスは、テストステロン(いわゆる男性ホルモン)工場のようです」。今回の論文の共著者で、英オックスフォード大学博士課程修了後の研究者、ルーシー・テイラー氏はこう話す。マスト期のオスは、においの強い尿を絶えずしたたらせ、頬の特殊な腺がふくらみ、フェロモンを含んだ濃い液体をそこから分泌させる。

 これが効果を発揮する。「マスト期のオスは、そうでないオスよりもはるかに有利です」と話すのは、シンシア・モス氏だ。ゾウの保護団体「アンボセリ・トラスト・フォー・エレファンツ」の設立者で、代表を務めている。

 マスト期のオスは、メスにはとても魅力的に感じられる。2007年のある研究によれば、1つの個体群にいる子ゾウの80%近くが、マスト期のオスと交尾して生まれた子だったという。

 ゾウのオスは15歳ごろから交尾できるようになるが、マスト期のリズムが規則的になるのは35歳ごろからだ。そして50歳までには、メスに向かって駆け出さんばかりになっている。たいていの哺乳類は年齢と共に繁殖力が弱まっていく中で、こうした過程をたどる動物は珍しい。

 この発見は単に興味深いだけではない。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで危急種に指定されているこの動物の保護に大きく関わってくる可能性がある。象牙密猟者やハンターは、高齢の大きなオスをよく標的にする。一方、生殖に積極的なこれらのオスが個体群からいなくなると、個体数にどう影響するのかは明らかでないと著者らは話している。

・高齢オス、メスを求め速く広範囲を移動
 今回の研究では、マスト期のオスが交尾に投入するエネルギーを突き止めるため、ケニア北部の2つの国立保護区に広がる約900頭の個体群を対象に、さまざまな年齢のおとなのオス30頭に追跡用のGPS首輪を装着。研究チームは2000年から2018年にかけてゾウの移動を断続的に記録し、メス探しに費やす労力を表すものとして、毎日の平均スピードを明らかにした。

 調査の間、最も高齢のオスたちは、マスト期以外は歩く速度が最も遅かった。だが、マスト期が始まるとこの年配者たちはフル回転になり、若いライバルたちよりも早く歩いていた。50代でありながら、この期間には歩き回る範囲も3.5倍に広がっていた。

「基本的に、彼らは全てのエネルギーを蓄えておいて、マスト期に入るとそれを消費するということです」とテイラー氏。

 年を取ったオスが、なぜこれほど交尾に熱心になるのだろうか。まず、これらのゾウは70歳代まで生きることから、メスは交尾の相手を探す際、健康状態を示す尺度として年齢を使うのだとモス氏は言う。

 テイラー氏はもう1つの要因として、「年を重ねるとともに、オスの体はずっと成長を続けます。ゆえに優位な存在となり、メスはその点を好むのです」と話している。

・大型ゾウも抗えない密猟の影響
 だが、ゾウたちが対抗できないことが1つある。合法であれ違法であれ、狩猟の標的になることだ。

 例えば、今回の研究のためにテイラー氏らのチームが追跡していた高齢のオスのうち、何頭かは2011年に続発した象牙目当ての密猟で殺されてしまった。

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