「琵琶湖の深呼吸」が今年、1979年の観測開始以来初めて確認できなかった。酸素を多く含んだ湖面近くの水と湖底の水が混ざり合う自然現象で、いつもなら冬に起きる。生態系への影響や水質悪化が懸念されるため、滋賀県は湖底付近の生物の状態や酸素量の監視を強める方針だ。

 滋賀県高島市沖にある水深約90メートルの「第一湖盆」。県琵琶湖環境科学研究センターの職員が4月8日、水質実験調査船「びわかぜ」に乗り、湖底層の水に溶けた酸素の量(溶存酸素量、DO)を測った。観測点のDOは1リットルあたり5・0ミリグラムで、例年の半分程度しかなかった。

 琵琶湖では例年なら1〜2月に「全層循環」が起きる。強風や雪解け水で表層の水が冷やされて下層に沈み、下層の水が上昇する。酸素を多く含んだ表層の水が湖底に届き、生物がすみやすい環境になるので、「琵琶湖の深呼吸」とも呼ばれる。

 県は毎年、琵琶湖の最大水深(約104メートル)に近い第一湖盆を調査し、琵琶湖全体で全層循環が起きたかを判断している。

 だが、この日の調査では、酸素を多く含んだ表層の水は、水深70〜80メートル域より下に届いていなかった。季節はすでに春。湖の表層の水温は上昇している。これまで最も遅かったのは2007年で、それでも3月19日だった。

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朝日新聞デジタル
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