【5月11日 AFP】
黒海(Black Sea)と大コーカサス山脈(Great Caucasus Mountains)の間に位置し、ワイン発祥の地と言われるジョージアが今、世界初という火星でのブドウ栽培に挑戦している。

 ジョージアの研究者や実業家らは、米航空宇宙局(NASA)が火星での「持続的な人間の居住」に関するアイデアを公募した際、自国のワイン造りを火星にまで進出させるという計画を思い付いた。

 プロジェクト名「IXミレニアム(IX Millennium、9千年紀)」には、8000年に及ぶジョージアのワイン造りの歴史が込められている。

 このプロジェクトは、ジョージア宇宙研究機構(Georgian Space Research Agency)、首都トビリシにある経営工科大学(Business and Technology University)、国立博物館、民間企業スペースファーム(Space Farms)によって組織されたコンソーシアムにより運営されている。

 火星の有人探査をめぐっては、NASAは今後25年以内という目標を掲げているが、米富豪イーロン・マスク(Elon Musk)氏が創業した米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)はそれよりも10年早い探査の実現を目指している。

■火星に適した品種を特定

 今回の計画に携わる宇宙生物学者のマリカ・タラサシビリ(Marika Tarasashvili)氏は、火星の土壌を地球と同じぐらい豊かにすることができる細菌の開発を行っており、すでに「画期的な」結果を達成したという。

 研究者らはジョージア各地から、硫黄泉のような「極端な生態系」に生息する細菌を収集し、それらを火星環境で生存可能な菌株と交配させた。この細菌が生命の存在しない火星の土壌を豊かにし、将来入植者らが植物を栽培できるようになると期待されている。

 タラサシビリ氏らのチームはまた、ジョージア原産の525品種のブドウの皮を調べ、紫外線レベルが高い火星に対して最も耐性がある品種を探った。予備実験では、皮の色が薄く、青リンゴの香りがする軽い白ワイン造りに向いている人気品種ルカツィテリ(Rkatsiteli)が最も紫外線に強いことが分かった。

■火星用の温室

 IXミレニアムに参加するスペースファームの創業者、トゥシア・ガリバシビリ(Tusia Garibashvili)氏は「遠い将来、火星への移住者たちは火星の土で直接植物を栽培することができるようになる」と語る。「だが、まず初めに、完全に制御できる持続可能な火星用の温室を開発する必要がある」

 スペースファームは現在、トビリシのホテル内に「将来の火星農業にとって理想的な技術」である垂直農法の実験室を建設中だ。この施設では室温、温度、照明が慎重に管理されるという。

 その次の段階では、経営工科大学内に建設中の実験室に設けられた火星環境下にて、ジョージアのさまざまな品種のブドウの実験をする計画だ。同大のニノ・エヌキーゼ(Nino Enukidze)学長は、「(火星環境で)植物は、氷点下の気温、高レベルの放射線と一酸化炭素、さらに高高度の気圧にさらされる」と説明した。

 同学長は「火星の夢はさておき、われわれの実験は、人類が直面する数多くの環境問題に対する極めて重要な情報を提供している」「地球の気候変動が引き起こす問題に耐性のある食用作物を突き止め、栽培できるようになる」と語った。(c)AFP/Irakli METREVELI

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