■火成岩や変成岩の上は停電などが起きやすく、海岸線も危険

 太陽は常に変化している星だ。活動がとくに盛んなときには、放射線や荷電粒子を放出する太陽フレアが発生する。小さなフレアであれば、太陽から放出された物質が地球の大気にぶつかって、みごとなオーロラが見られるかもしれない。

 しかし、強力な太陽フレアは、地球の磁気圏を乱し、地磁気嵐が発生して、電気のインフラに深刻なダメージを及ぼす可能性がある。

 そしてこのたび、地上の都市が強力な地磁気嵐をやり過ごせるかどうかは、その土地の地質によることが、学術誌「Space Weather」に発表された研究結果により明らかになった。

 論文の筆頭著者で、研究を主導した、アメリカ地質調査所(USGS)の地球物理学者であるジェフリー・ラブ氏らは、米北東部において、さまざまな種類の岩石が地磁気嵐に対してどのような反応を示すかを分析した。

 調査結果は、電力網へのダメージは土地の岩石の種類に応じて大幅に変わることを示している。たとえばニューイングランド地方の高地に住んでいる人々は、地磁気嵐の最中に大規模なダメージを受けるリスクが高い。対して、中部大西洋岸の平野部の人々のリスクははるかに低い。

 科学者の間では、太陽嵐がもたらすダメージに地質が大きく関わっていることは以前から知られていた。しかし今回の論文ではそこからさらに一歩踏み込み、米北東部の複数箇所で、地質の違いで被害がどれだけ異なるかについて、詳しい数値を示している。この結果は、ひとつの国に限った研究ではあるものの、世界の他の地域にも当てはまる。

これまでは、地域の地磁気リスクに関する具体的なデータが不足していた。また、太陽嵐の頻度や強度、対処するテクノロジーも十分とは言えない。つまり、宇宙天気のリスクの評価は、ハリケーンや地震などより数十年分遅れており、緩和計画の立案は「極めて困難」な状況にあると、オックスフォード大学環境変動研究所の上級研究員、エドワード・オートン氏は言う。地域の地磁気リスクについてより詳細な調査を行えば、こうしたデータ不足を補うことができる。またオーストラリアと中国では、すでに調査が開始されているという。

「より大きな観点から見れば、そうした調査を行い、地磁気のデータを集めることにかかるコストは、決して高いものではありません」とラブ氏は言う。「しかし、これを実行するには、だれかが率先して進める必要があります」

■機雷が勝手に爆発

 強力な太陽嵐の被害を軽視すべきではない。地球の方向に強い太陽フレアが発生すると、X線やガンマ線などが光の速さで、つまり、観測できるのと同時に地球に衝突する。これが上層大気中の粒子を刺激し、電波信号を妨害する(「デリンジャー現象」)。フレアが相当に強力であれば、航空会社の無線や、衛星を使ったナビゲーション網は、不調をきたすか、まるで機能しなくなる。

 フレアの発生から最も速くて30分ほどで、光速に近い速さで移動する陽子(プロトン)の洪水が地球に到達する。この「プロトン現象」により、衛星に使われている電子回路はダメージを受け、地球の磁気圏外にいる宇宙飛行士は、生命に関わる量の放射線にさらされる可能性がある。

 ただし、プロトンは地上までは届かない。地上に直接的な影響があるのは、太陽フレアが発生して18時間から数日後に、プラズマ(電子と陽イオンに電離した気体)が地球にやってきたときだ。巨大なプラズマの雲が、地球の磁気圏に衝突すると、地球の磁気圏が大きく乱され、大規模なものは地磁気嵐あるいは磁気嵐と呼ばれる。

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