北海道大学と株式会社資生堂グローバルイノベーションセンターの研究グループは、数理モデルによる予言で、高いバリア機能を持つ3次元培養表皮の構築に成功した。

 ヒトの表皮細胞を用いて作られる人口表皮(表皮モデル)は、表皮のメカニズム解明といった基礎研究や、皮膚外用剤、化粧品などの開発に重要だが、従来ヒト表皮を十分に模倣できておらず、細胞分裂を重ねた表皮細胞を用いると薄い表皮しか構築されないこと、バリア機能が不完全であることが課題だった。
 本研究グループは、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業CRESTの中で、表皮恒常性の維持メカニズムを反映させた数理モデルを確立した。この数理モデルを用いて様々なコンピュータシミュレーションを行ったところ、表皮の構造や厚さは基底膜の構造に大きく影響され、基底膜が波のような構造をしている時に表皮が厚くなることがわかった。現在の表皮モデルの底部はほとんどが直線的なものであるため、本グループは、表皮モデルの底部に凹凸をつければ、分厚く、バリア機能の高い表皮モデルを構築できるのではないかと考えた。

 そこで、培養器の底部に様々なパターンのポリエステル布を敷いて表皮細胞を培養したところ、コンピュータシミュレーションが予言したパターンの場合、細胞分裂を重ねた表皮細胞でも、ヒト表皮と同等の厚みとバリア機能を持つ高機能3次元表皮を構築することができた。

 この3次元表皮モデルは、様々な皮膚疾患研究に役立つほか、皮膚外用剤や化粧品の効果の評価、あるいは再生医療にも展開できる可能性を持つ。さらに本成果は、数理モデリングが医学・生命科学の領域で有効な方法論であることも示唆しているといえる。

論文情報:【Scientific Reports】Mathematical-model-guided development of full-thickness epidermal equivalent
https://www.nature.com/articles/s41598-018-36647-y

https://univ-journal.jp/24189/