【8月30日 AFP】
ニュージーランドに生息する、長い金髪の眉を持つペンギンは毎年12月、南極大陸との中間に位置する海域まで移動して戻ってくるという「遠泳の旅」に出ている。ペンギンの移動に関する追跡調査に初めて成功し、約2か月に及ぶ旅の実態が判明した。研究論文がこのほど、米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に掲載された。

 ペンギンは世界中で愛され、数々の漫画やアニメの人気キャラクターになっている。その一方で、生態に関しての研究はあまり進んでいないという実情がある。しかし、研究チームが記録したデータは、その移動距離が驚異的なものであることを示していた。

 研究対象となったのは、ニュージーランドに生息するキマユペンギン(学名:Eudyptes pachyrhynchus)。このペンギンは毎年、その生息する海域を離れて移動するが、その移動先についてはこれまで分かっていなかった。

 動物学者らの考えは、沿岸付近にとどまっているのだろうというものだった。これを明らかにするため、研究計画「タワキプロジェクト(Tawaki Project)」を立ち上げた研究チームは、人工衛星追跡タグをペンギン20羽に装着し、日々の移動行動に関する追跡調査を行った。プロジェクト名にある「タワキ」とは、キマユペンギンの現地での名前だ。

 ニュージーランド・オタゴ大学(University of Otago)動物学部の研究員で、タワキプロジェクトの責任者を務めたトーマス・マッターン(Thomas Mattern)氏は、「初めて見た時は、衛星データが間違っていると思った」と話し、「そこからは、ただ単に訳が分からなくなり、心底驚いた。いったい彼らはどこへ向かっているのか、いつ止まるのか…」と続けた。

 キマユペンギンは、南極大陸との中間に位置する海域まで泳いでいた。そこは北から流れ込む暖流と南からの寒流がぶつかる海域だ。ペンギンたちはそこで向きを変え、ニュージーランドに戻った。

 この海域までの往復で、1羽の雌は67日間で6801キロ移動した。1羽の雄は77日間で5597キロを泳いだ。今回の最新データは、ペンギンが地球上で最も非凡な水泳能力を持つ脊椎動物の一種であることを裏付けるものとなった。

 マッターン氏によると、ロシアではペンギンの羽の流体力学的特性を模倣して自国の潜水艦に応用するための研究も行われていたという。

■移動の必要性に関する謎

 そもそも、研究チームはどのような理由でペンギンの移動行動に着目したのだろうか。

「ペンギンは海鳥であり、最大で生涯の8割を海に出て過ごす。そこで彼らが何をしているかについては全く明らかになっていない」と、マッターン氏は説明する。

 また、その個体数が減少傾向にあると考えられている状況においては、「この問題に何らかの対処をするために、ペンギン種に影響を及ぼしているものについて知る必要がある」と付け加えた。

 海の温暖化、観光産業、漁業などは、ペンギンに影響を及ぼしている可能性が高い。しかし、その影響についてより深く知るためには、今後さらに科学的な調査を進める必要がある。

 しかし、ニュージーランド沿岸海域で魚や他の餌が豊富になる12月に、わざわざ遠くの海に移動しなければならない理由は一体何なのか。

 この謎について科学者らは、ニュージーランドを生息地とするより前の時代に、南方に生息していたペンギンの祖先種から受け継いだ本能と関係がある可能性もあるとしている。(c)AFP

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AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3187823