オホーツク海南部沿岸には、1月から3月にかけて出現する小さなクリオネ「冬クリオネ」と、4月から7月にかけて出現する大きなクリオネ「春クリオネ」がいる。これら両者が実は同一の種であったという事実を、国立極地研究所などの研究グループが突き止めた。

研究に参加していうるのは、蘭越町貝の館の山崎友資氏、北海道立オホーツク流氷科学センターの桑原尚司氏、国立極地研究所の高橋邦夫氏である。

クリオネの仲間は現在、富山湾に棲息する近年発見された新種を含めて5種が確認されている。もっとも有名なものが「ハダカカメガイ」という和名であり、太平洋に棲息する。大西洋や北極海に棲息するものは大型種で、10cm以上にも成長し、近年「ダイオウハダカカメガイ」という和名が提唱された。

さてオホーツク海南部には前述のように沿岸の冬クリオネと沖合の春クリオネがいる。春クリオネは大きさから見てダイオウハダカカメガイではないかと推測されたため、出現場所、時期、体長が異なる2つの集団の遺伝的解析と比較を行った。

そして結果として、両集団のDNAに種レベルの相違は無く、「どちらもハダカカメガイである」という事実が分かったのである。

なぜ同一の種においてこのような外見上の変化などが生じるのか。この二つのクリオネが出現するタイミングは、海流の影響を受けているらしい。同海域は、宗谷暖流、宗谷暖流前駆水、日本海固有水(もしくはオホーツク海の底層水)の湧昇流によって形成される冷水帯、東樺太海流の四つの海流などの消長と一致しているのだという。

この二つの集団についてさらに詳しい追跡調査を行うことで、地球温暖化に起因する海洋環境の変化に対して生物がどのように応答するかを分析する手がかりが得られることが期待されるとのことである。

なお、研究の詳細は、Springer社(ドイツ)の海洋科学の学術誌Thalassas: An International Journal of Marine Sciencesに掲載されている。(藤沢文太)

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