■近年、すっかり落ちぶれてしまったロシアの宇宙開発。ようやく再生に向けた動きがはじまっている

今年3月に行われたロシア大統領選挙は、現職のプーチン氏が圧勝。
5月8日には4期目となるプーチン政権が発足し、18日までにメドヴェ―ジェフ首相以下、
新内閣の顔ぶれが明らかになった。

その中で、第2期プーチン政権の途中から約6年にわたって副首相を務め、
軍事・宇宙分野を担当してきたドミートリィ・ロゴージン氏は退任。
代わってユーリィ・ボリーソフ前国防次官が同ポストに就任するという動きがあった。

この交代の理由として、ロゴージン氏の副首相時代に、ロシアの宇宙開発で失敗が相次ぎ、
さらに改善もできなかったためという見方がある。
事実、かつては米国と並ぶ"宇宙大国"と呼ばれたロシアは、いまではすっかり落ちぶれてしまっている。

■ロシア宇宙開発の崩壊

ロシアの宇宙開発の崩壊は、ロシア連邦が誕生した1991年から、すでに始まっていた。

ロシアはソ連時代に築かれた、ロケットや衛星、宇宙船の技術の大部分を受け継いだ。
その技術の高さは折り紙付きで、米国企業の人工衛星を打ち上げたり、
共同で宇宙ステーションを建造したりなど、冷戦中には考えられなかった事業がいくつも実現した。

しかしその一方で、ロシアとしての新たな宇宙計画はなかなか立ち上がらず、
立ち上がったとしても中止や遅延、そして失敗を繰り返した。

たとえば次世代ロケットとして期待された「アンガラー」は、1990年代に開発が始まるも、
打ち上げられたのは2014年になってからだった。火星探査機はすべて失敗し、
さらに気象衛星や測位衛星も打ち上げられなかったり故障したりと、満足に運用できなかった。

ソ連時代の遺産を切り売りすることで、なんとか体面を保つことはできたものの、
それも近年では陰りが見えはじめ、その"枯れた技術"によって長らく安定した運用を続けていたロケットも、
打ち上げ失敗を起こすような有様となっている。

■資金不足から始まった崩壊

なぜ、ロシアの宇宙開発は崩壊したのだろうか。

その発端は、ロシアの資金不足にある。
ロシア誕生後、エリツィン大統領は経済の立て直しに奔走したもののうまくいかなかったことは広く知られているが、
宇宙予算もそのあおりを食って大幅に削減された。
これにより、新たな宇宙計画は軒並み、中止や凍結、遅延の憂き目にあった。

なんとか継続された計画も、やはり予算不足から十分な開発や試験を行うことができず、
それが火星探査機や衛星の失敗を引き起こした。

さらに、新しいロケットや衛星が造れないことで、熟練の技術者による新人の育成や技術の伝承が行えず、
技術者の世代交代に失敗した。現在、技術者の約半数が50歳以上、30歳以下の若手は5分の1ほどで、平均年齢は50歳前後。
さらにはソ連の宇宙開発の黎明期から携わる、70歳近い技術者もいまだ現役だという。

その結果、新しくものを造る技術はもちろん、これまで造り続けてきた古いロケットや衛星を、
正しく造り続ける技術も失われ、これまで安定して運用できていたロケットも、打ち上げに失敗するようになったのである。

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関連動画
Roscosmos https://youtu.be/M1nwGgVjDg0

ニューズウィーク日本版
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/06/4-55.php
続く)