続き)>>1

■現代の身体文化の中で、関節トレーニングほど過小評価されている分野はないだろう。
体が大きく強くなるにつれ、関節にかかわるトラブルは切実な問題になっていく。
筋肉が強くなり、筋肉にかける負荷が大きくなると、関節や腱にかかる負荷も大きくなるからだ。
痛む関節に悩むボディビルダーは多い。彼らのトレーニング法だと、
硬直した不自然な動作やケガをしやすい結合組織をつくり出すものになる。
キャリステニクスが優れているのは、この点だ。関節や腱にトラブルを招くのではなく、
それらを強いものに変えていくトレーニングになるからだ。

現代の身体文化の中で、関節トレーニングほど過小評価されている分野はないだろう。
体が大きく強くなるにつれ、関節にかかわるトラブルは切実な問題になっていく。
筋肉が強くなり、筋肉にかける負荷が大きくなると、関節や腱にかかる負荷も大きくなるからだ。
痛む関節に悩むボディビルダーは多い。彼らのトレーニング法だと、
硬直した不自然な動作やケガをしやすい結合組織をつくり出すものになる。
キャリステニクスが優れているのは、この点だ。
関節や腱にトラブルを招くのではなく、それらを強いものに変えていくトレーニングになるからだ。

●重力を使って万力のようなグリップをつくる「ハンギング」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/2018/05/10/save/kintorebook180510-2.jpg
●瞬発力を備えたチタンのような指をつくる「拷問グリップワーク」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/2018/05/10/save/kintorebook180510-3.jpg
●グリップを超人的に仕上げる「指先プッシュアップ」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/2018/05/10/save/kintorebook180510-4.jpg

数多あるハンギングの中でも究極のトレーニングは、意外にも、水平バーに引っかけたタオルにぶら下がる「タオル・ハング」だという。言葉の響きは拍子抜けするが、片手でタオルを握って60秒間ぶらさがれれば、「全人類の上位1%以内」に入れる握力が身につくと著者は語る。

グリップを鍛えることによって、前腕や腹斜筋といった男らしさを演出する筋肉も、自重でビルドアップできる。また、首を鍛える「ブリッジ」や、ふくらはぎを鍛える「カルフレイズ」も、強度ごとに段階を追って複数のやり方を紹介している。

■一般的なストレッチだと、ケガをしやすくなる

自重による「関節トレーニング」について具体的かつ詳細な解説がなされている次のパートでは、衝撃的な警告も付されている。

「筋肉のストレッチで、ケガをしやすくなる」と。

われわれは筋トレの前後のストレッチによって「ケガを予防できる」と、素朴に信じているが、
監獄の自重トレーニング・マスターたちの間では、正反対の意識が浸透しているという。
本書では、一般的なストレッチが筋肉を傷めるおそれがある根拠と、
真にケガを予防するための自重による「能動的ストレッチ」について、丁寧に伝授している。

そして最後の「ライフスタイル」パートでは、規律や睡眠、タバコやアルコール、ステロイド、
食事(「ザ・監獄ダイエット」と名付けられている)、
プロテイン、ケガの治癒、メンタル......に関するポール・ウェイド流のアドバイスがまとめられている。

彼が言うように、毎日1時間トレーニングしたとしても1日の約4%に過ぎない。
「この4%がとても大切な時間になる。そして、残りの96%をどう過ごすかが、
目を瞠るような成果をもたらすか、そこそこの結果にしかならないかを左右する」のである。

果たしてわれわれは、トレーニングをしていない96%の時間も含めた100%を、この本に従って鍛錬し生活できるか。
簡単ではないだろうが、それにより「人生100年時代」にいつまでも動き続けられる屈強な肉体を身につけることができるかもしれない。

「グリップ」と「関節」の自重トレーニング。確かに、派手なうたい文句ではない。
ただ、これだけは言える。頑強な高層ビルや美しい電波塔が、ぬかるんだ地面の上に建つことはありえない。

ニューズウィーク日本版
https://www.newsweekjapan.jp/stories/carrier/2018/05/post-10132.php