【3月22日 AFP】
英国の科学者らが21日、頭部に装着可能な次世代の脳スキャン機器を開発したとの研究論文を発表した。
新たに開発された機器は、ヘルメットのように頭にかぶることができ、脳スキャンを実行中でも患者が自由に動けるため、
子どもや高齢者の神経疾患の治療に大変革をもたらす可能性があるという。

 うなずきやストレッチといった自然な動作、さらにはラケットでピンポン球を打つといった動きの最中でも、
患者の脳活動の調査を初めて可能にしたこの技術について、科学者らは大きな期待を寄せている。

 現在の「脳磁図(MEG)」と呼ばれる脳スキャン技術では、
脳の磁場を測定するために用いられるセンサーを絶対零度に近いマイナス269度の超低温に維持する必要があるため、
大がかりな冷却技術が不可欠となる。

 装置の重量は通常500キロ前後に及び、患者は生成される脳画像が乱れないように完全に静止した状態を保たなくてはならない。
幼児やパーキンソン病などの運動性疾患のある人の場合では、体の静止状態を長時間保つことが難しく、
患者の脳スキャンをMEGで行うことには困難が伴うことが多い。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)と
英ノッティンガム大学(University of Nottingham)の研究チームが開発した最新の脳スキャン機器は、
最先端の「量子」脳センサーを用いることで冷却を不要にした。これは脳走査技術における2つの大きな飛躍を示している。

「一つは、頭皮の表面に直接装着できることだ。
従来よりはるかに脳の近くにスキャナー(測定器)を接近させることができるので、得られる脳信号の量が増える」と、
ノッティンガム大のマシュー・ブルックス(Matthew Brookes)准教授は説明する。

 そして「もう一つは、非常に軽いことだ。これによりスキャナーを頭皮の表面に置くことができる上、
被験者はスキャン実行中に頭を動かすことができる」と続けた。

■「より早期の治療と診断が可能に」

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された論文では、
被験者がさまざまな身体動作を行う間にヘルメット型スキャナーで被験者の脳磁場の画像を撮影した実験結果が示されている。

 実験では、ラケットとボールで遊んだり、
紅茶をすすったりなどの被験者が行う活動によって特定の脳部位に生じる電気的活動の大きな違いを測定することに成功した。

「脳磁場の状態を表す詳細な画像を外から撮影できる」ため、被験者がさまざまな課題に臨むのに伴って、
どの脳部位が活性化するかを研究者は確認することができるとブルックス氏は説明している。

 他方で、UCLのギャレス・バーンズ(Gareth Barnes)教授は「外科医師が手術のターゲットを定め、
施術を迅速化する上で、このセンサーが助けになるだろう」と想定されるメリットについて語った。
不要な一部外科手術を特定し、より早期の治療と診断も可能にするとしている。

 研究チームはすでに、カスタマイズ性をさらに向上させたバイクヘルメット型スキャナーの開発に取り組んでいる。
これにより、画像精度を成人で4倍、子どもで20倍に向上させた脳画像を提供できる可能性があると、研究チームは予測している。
「この技術は、神経科学および臨床の広範な応用分野にわたる大変革をもたらす可能性を秘めている」と論文は述べている。(c)AFP

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AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3168309