国際電気通信基礎技術研究所(ATR)のグループは、脳に残る恐怖の記憶を無意識のうちに書き換え、
その記憶が起こす心身の反応を和らげる手法を開発した。
脳が恐怖を感じたと推定される際にお金を渡すと、症状が治まった。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療につながるとみている。

 川人光男・脳情報通信総合研究所長と千葉俊周連携研究員らの成果で、米科学アカデミー紀要(電子版)に6日発表する。

 実験に参加した17人の脳の活動を機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)と呼ぶ特殊な計測器で調べた。
人工知能(AI)を使って脳が恐怖を感じたときの活動パターンを見つけ、パターンが表れた際に、
1日最大3千円の報酬を与えた。5日間続けると、汗をかく量などが大幅に減った。恐怖の記憶が和らいだためと分析している。

 PTSDの治療は通常、恐怖の対象に関する絵などを大量に見せて慣れさせることで反応を和らげているが、
患者は大きなストレスを感じる。開発した技術だと、患者は負担を感じずに治療できる可能性がある。

日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27766540W8A300C1000000/