微粒なプラスチック粒子「マイクロプラスチック」は海に拡散されることで
海洋を汚染し海洋生物たちに影響を与えるものとして懸念されています。
中深海水層に生息する魚はこれまでマイクロプラスチックの拡散にあまり関わっていないと考えられていたのですが、
新たな研究で、大西洋北西・中深海水層の魚のおよそ4分の3の胃袋からマイクロプラスチックが検出されたことが発表されました。

Frontiers | Frequency of Microplastics in Mesopelagic Fishes from the Northwest Atlantic | Marine Science
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmars.2018.00039/full

High levels of microplastics found in Northwest Atlantic fish
https://phys.org/news/2018-02-high-microplastics-northwest-atlantic-fish.html

マイクロプラスチックとは微小なプラスチック粒子のことで、
数十年続く環境汚染によって海に蓄積したと見られています。
マイクロプラスチックが人間や動物に与える影響はまだ研究中であるものの、
海洋生物に炎症や体重減少といった影響を与える可能性が示されています。
また、生態系の中で捕食行動が繰り返されることで汚染が広がっていき、
マイクロプラスチックが化学的な汚染物質とくっつくことで、
毒が捕食動物の体内に蓄積されることも考えられています。

2016年の研究では、マイクロプラスチックを含む海水で育った稚魚は、
マイクロプラスチックを含まない海水の稚魚と比べて移動距離や行動が劇的に少ないことが判明。
また、マイクロプラスチックの密度が高くなるほど稚魚の成長が遅くなるという内容も示されています。

Frontiers in Marine Scienceで発表された新しい論文によると、
大西洋北西・中深海水層に生息する魚の73%の胃袋からマイクロプラスチックが検出されたとのこと。
これは世界的に見ても高いレベルで、魚を通じてマイクロプラスチックが世界中の海に広がる可能性が懸念されています。
また、マイクロプラスチックを胃の中に持つ魚を別の魚が捕食し、
その魚を最終的に人間が食べることも考えられ、
マイクロプラスチックの毒が人間の食卓に影響を与えることも考えられます。

マイクロプラスチックによる汚染は比較的新しい話題ですが、
近年は化粧品に使われているマイクロプラスチックの禁止を検討している政府も存在します。
研究を行ったアイルランド国立大学のAlina Wieczorek氏は
「中深海水層に生息する魚が高い割合でマイクロプラスチックを摂取していることは、
海のエコシステムや生物地球化学のサイクル全般にとって重大です」と語りました。

中深海水層の魚はマグロやメカジキ、イルカ、アザラシ、鳥などのエサとなる魚。
水深200〜1000mに生息し、夜になると海面に上がってエサを食べ、日中になると再び海深くにもぐります。
このような行動は地球上における化学物質の循環行動にとって重要なものですが、
この時マイクロプラスチックをも拡散してしまうとのこと。
しかし、マイクロプラスチックの拡散について中深海水層の魚の行動を調査した研究はまだ少ないことから、
Wieczorek氏らは大西洋北西沖の魚を調べたそうです。

「大陸から離れた場所で暮らすこれらの魚は、
理論的には人間が排出したマイクロプラスチックの影響を受けないはずです。
しかし、彼らは定期的に海面まで回遊するため、マイクロプラスチックを摂取したのではないかと我々は考えています」と語るWieczorek氏。
研究チームによると、魚の胃には布地に使われるような高レベルのプラスチック繊維が含まれていたとのこと。

研究者の中には魚の胃から見つかったプラスチック繊維を「研究所の環境の影響を受けたもの」として過小評価する人もいますが、
Wieczorek氏は今回の研究に際して、空気中に含まれるプラスチック繊維の影響を慎重に取り除いていったといいます。

Wieczorek氏らは、中深海水層の魚がどのようにマイクロプラスチックを摂取しどのように拡散していったのかの研究を、
今後さらに深めていく予定です。

関連ソース画像
https://i.gzn.jp/img/2018/02/19/microplastics-in-mesopelagic-fishes/pexels-photo-697058.jpg

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180219-microplastics-in-mesopelagic-fishes/