琉球大学・国際沖縄研究所の狩俣繁久教授らの研究グループが、
琉球語を対象にした「言語系統樹」を作成する大規模な研究プロジェクトを進めている。
琉球語が枝分かれした各地域方言間の影響や関係性を明らかにし、
沖縄・奄美の言葉の複雑な相互関係の把握を目指す。系統樹で琉球語の広がり方を示すことによって、
人や文化の動きも分析できるという。複層的な資料の解析、研究エリアが広範囲に及ぶ点など、
関係者は「世界的にもまれな研究になる」と話している。

系統樹とは、さまざまな生物の時間的な変化を理解するため、類縁や分布の関係が示された樹木状の図。
生物学で生き物の進化を把握する目的で作成されるほか、言語学でも用いられており、
各言語の比較・検証が可能になる。

 昨年5月、文部科学省に約1億3千万円の研究費(2021年度までの5年間)が採択され、
狩俣教授を代表者とする7人の研究グループが言語系統樹の作成を始めた。

 沖縄、宮古、八重山、奄美を含む琉球列島で調査された語彙(ごい)を基に

(1)沖縄言語研究センターが調査した800地点200語(活用形含む350項目)
(2)同センターの調査から選択した100地点1100語
(3)これまでに刊行された奄美・沖縄各地の10冊の方言辞典−の3段階の系統樹作成に向け、
データ入力や系統樹の試作などの作業を進めている。データベースに蓄積する語彙量も大幅に増やす。

 3段階の系統樹により単語数が増加し、より精密な系統樹が描けるため、
単語や文法、発音などの相互関係や、言語の接触や分岐などの因果関係が理解できるようになるという。

 狩俣教授は「言語系統樹の研究はまだ十分ではないが、
今回のように琉球弧の広い範囲で3段階の言語系統樹が作成されることは世界的にもまれだ」と指摘。
「単語や文法、発音など、さまざまな系統樹を作成することが可能になり、
より複雑な影響関係を把握することができる」と研究の意義を話している。

図:狩俣繁久教授らが作成した琉球語の言語系統樹
http://gmom04-res.cloudinary.com/image/upload/v1491893744/jgfm4e3rgc5anutovuks.jpg

沖縄タイムス
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/204534