南海トラフの海底下温度と断層の存在を「ちきゅう」の掘り屑から推定

2017年8月16日
福地里菜(東京大学大気海洋研究所(現・海洋研究開発機構))
山口飛鳥(東京大学大気海洋研究所)
山本由弦(海洋研究開発機構)
芦寿一郎(東京大学大気海洋研究所)

発表のポイント
◆紀伊半島沖南海トラフの海底下1〜3kmの地層がかつて経験した最高温度を、「ちきゅう」によって採取された掘削試料から算出した。
◆カッティングス(掘り屑)を用いて海底下の断層の存在や過去の地温勾配を推定できることを示した。
◆南海トラフの巨大地震発生帯上盤をなす付加体の形成史解明に寄与し、地震発生の理解につながる。

発表者
福地里菜(東京大学 大気海洋研究所/新領域創成科学研究科 元大学院生(現在 海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター ポストドクトラル研究員))
山口飛鳥(東京大学大気海洋研究所 准教授)
山本由弦(海洋研究開発機構 数理科学・先端技術研究分野 主任研究員)
芦寿一郎(東京大学 大気海洋研究所/新領域創成科学研究科 准教授)

発表概要
東京大学大気海洋研究所の福地里菜大学院生(現・海洋研究開発機構ポストドクトラル研究員)、山口飛鳥准教授、芦寿一郎准教授、海洋研究開発機構の山本由弦研究員からなる研究チームは、地球深部探査船「ちきゅう」によって南海トラフから採取されたカッティングス試料(注1)に炭質物ビトリナイト反射率分析(注2)を適用し、海底下約3000mまでの最高被熱温度(注3)を推定しました。
その結果、同じ最高被熱温度を持つ層が繰り返すことから、付加体(注4)内部の海底下1300〜1500mと2400〜2600mに大規模な逆断層(注5)帯が存在することを推定しました。また、断層帯の上下の区間における最高被熱温度の勾配(古地温勾配)が掘削地点の現在の地温勾配(注6)よりも高いことから、付加体を構成する堆積物は沈み込む前に最高被熱温度に到達していたことを提案しました。
本研究は深海掘削においてカッティングスをたくさんの深度から系統的に採取して最高被熱温度を推定した初めての例であり、南海トラフの地震発生帯上盤をなす付加体の構造解明に対して大きく貢献すると期待されます。
--- 引用ここまで 全文は引用元参照 ---

▽引用元:東京大学大気海洋研究所 2017年8月16日
http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/topics/2017/20170816.html