(つづき)
人間の脳は、ストーリーを受け入れやすいようにできている

テキサス州オースティンにあるQC社の本社から2800キロほど北東に向かった地でも、別の研究者が、
プレゼンにおけるストーリーの効用について新たな証拠を見つけています。こちらはプリンストン大学の研究者、Uri Hasson氏で、
私たち人間の脳が、ストーリーを受け入れやすいように文字通り「配線」されていると、原文筆者に説明してくれました。

Hasson氏が率いる研究チームはまず、ストーリーを伝えている最中の話者の脳をスキャンし、その活動状況を調べました。
fMRI装置を使って、脳のさまざまな部位について血流量を測定したのです。次に、ストーリーを聞いている側の人たちについても、脳の活動を調査しました。
その結果、話し手と聞き手、双方の脳が「呼応し、時には対をなす反応パターンを示す」ことが判明しました。
簡単に言うと、聞き手の脳が、話し手の脳と同じような状態になったということですが、こうした反応が起きるのは、
話し手がストーリーを語っている時だけでした。話し手と聞き手の脳がシンクロする時、ストーリーが両者を結びつける「のり」の役割を示すということです。

原文筆者も独自に調べてみたところ、人気のTEDトークのうち、実に65%がストーリー仕立てであることがわかりました。
個々で語られているのは個人的な体験談やケーススタディ、あるいはブランドのサクセスストーリーといったものです。
ケン・ロビンソン氏やシェリル・サンドバーグ氏、エイミー・カディ氏が行った有名なTEDトークはすべて、
それぞれの講演者の個人的な体験に関するストーリーがその大部分を占め、プレゼンテーションで伝えたいテーマを強く印象づけるのに役立っています。

とりわけ、人権派の弁護士Bryan Stevenson氏のTEDトークでは、20分ほどのトークの中で、個人的なエピソードが3つ語られています。
聴衆からの自主的な寄付でStevenson氏の非営利団体「Equal Justice Initiative」に100万ドルが集まったことからも、
このトークがどれだけ説得力があったかはわかるでしょう。

ストーリーには力があります。ストーリーを好む性質は、私たち人間のDNAに刻まれているのです。
数千年にもおよぶ経験の積み重ねがあるのですから、説得力があるのは当然ですが、さらに最近、この経験則に、科学の裏付けが加わりつつあります。
起業家であれ、ビジネスの世界で活躍する専門職であれ、ストーリーによるコミュニケーションを避けている人は、
科学的に証明されている効果を十分に活用できてない、もったいない状況にあるのかもしれません。
http://www.lifehacker.jp/2017/04/170413_more_persuasive.html
(おわり)