パーキンソン病やレビー小体型認知症の病態解明、診断、治療に役立つことが期待されるマーモセットモデルの開発に成功

(公財)東京都医学総合研究所・認知症プロジェクトの長谷川成人、首都大学東京の大学院 博士課程の下沢明希らは、パーキンソン病やレビー小体型認知症の特徴的な病変である異常αシヌクレインの伝播をマーモセット脳で再現することに成功しました。

この研究成果は、AMED「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」、日本学術振興会科研費(新学術領域研究、基盤研究)の支援を受け、放射線医学総合研究所、東北大学との共同研究で得られたもので、2017年2月2日に神経病理学速報誌『Acta Neuropathologica Communications』に掲載されました。
http://actaneurocomms.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40478-017-0413-0

1.研究の背景
αシヌクレイン(*1)はパーキンソン病やレビー小体型認知症の特徴的病理の中心的分子であり、その異常病変の広がりと病気の進行に密接な関係があることが知られています。
最近、この異常になったαシヌクレインがプリオン(*2)のような性質を獲得し、正常αシヌクレインを異常型に変換することにより脳内を伝播することが提唱され注目されています。
また、マーモセットは小型の霊長類で脳の高次脳機能研究や疾患モデルとしての期待が高まっています。
2014年にスタートした国家プロジェクト「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(革新脳)」においても、マーモセットを用いたヒト脳の理解や認知症等の脳疾患の病態解明が進められています。

2.研究の概要
私達は、2頭のマーモセットの右脳の線条体に線維化した異常型αシヌクレインを接種する実験を行いました。
その結果、接種後3ヶ月において、いずれの個体においても異常リン酸化αシヌクレイン病変の出現と脳内伝播を確認しました。
病変は線条体から黒質に逆行性に広がり、黒質のチロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase, TH)(*3)陽性のドパミン神経細胞内に多数のレビー小体様構造が形成されること、さらにはその神経細胞が減少することが観察されました。
また、これら異常αシヌクレイン構造物はチオフラビンなどのβシートと結合すると強い蛍光を発する試薬で検出されることも確認されました。
本マーモセットモデルは、パーキンソン病やレビー小体型認知症の病態解明、診断、治療に役立つことが期待されます。
本研究は放射線医学総合研究所の樋口真人先生、東北大学の谷内一彦先生らとの共同研究によるものです。
--- 引用ここまで 全文は引用元参照 ---

▽引用元:東京都医学総合研究所 2017/2/14
http://www.igakuken.or.jp/topics/2017/0202.html