人間の知恵を開発するということは、
愛国の心、忠孝の心を開くことなのだ。
国に尽くし、家のために勤めるという
道が明らかであれば、
すべての事業は前進するであろう。

耳で聞いたり、目で見たりする分野を開発しようとして、
電信を架け、鉄道を敷き、蒸気機関車を造る。
こうして人の注目を集めても、
どういうわけで電信、鉄道が必要なのかを考えもしないで、
みだりに外国の盛大なことをうらやむ。
利害得失を議論することなく、
家屋の作り方からオモチャに至るまで一々外国の真似をし、
贅沢の風潮を助長する。

財産を浪費するならば、
国力は衰え、人の心は浅はかで軽々しくなり、
結局日本は破綻するよりほかないであろう。

- 西郷隆盛 -





文明というのは、
道理にかなったことが広く行われることを
褒め称えていう言葉であって、
宮殿が荘厳であるとか、
衣服がきらびやかだとかといった、
外観の華やかさをいうものではない。

もし西洋が本当に文明の国ならば、
未開の国に対しては、
慈愛の心をもって接し、
懇々と説きさとし、
文明開化に導くはずであろう。

ところが、そうではなく、
未開蒙昧の国に対するほど、
むごく残忍なことをして、
自分たちの利益のみをはかるのは
明らかに野蛮である。

- 西郷隆盛 -