■閉鎖相次ぐ理系大学

 IT産業は近年登場した職種なため職業選択の自由をはばむカースト制度の縛りを受けず、インドの低カースト層が続々と就職している−との指摘もある。

 だがインドの教育関係者は異口同音に「IT企業に進む人は圧倒的に高位カーストが多い」と話す。高位カーストほどハイレベルの教育を受けられる環境にあるためだ。やはり優秀なエリート層が、理数系に強いというイメージを作っているといえそうだ。

 ただ、サムエルさんが危惧するのはインドにおける理系学部の人気低下だ。IITに代表される一握りのトップ校に比べ、中位以下は振るわない。年間7%の経済成長を誇るインドだが、国内では技術者の就職が伸び悩んでいるためだ。

 就職難の原因としては、急速に大学数が増えたことによるエンジニアの供給過多が挙げられる。そこに米トランプ政権が専門職外国人向けビザ(査証)の発行を抑制したことで、米国への就職が厳しくなったことも追い打ちを掛けた。17年は理工系大学を卒業した学生のうち、10人に4人しか就職口がないのが実態だ。

 インド政府は3345ある理工系の大学や学部の数を800程度削減したい意向を表明している。サムエルさんは「IITへの入学希望者は多いが、全体として理系が隆盛というわけでは決してない。このままでは理系大国という評判と実態がますます乖離(かいり)していくだろう」と懸念している。

(算数のお勉強)
https://www.sankei.com/images/news/181206/wor1812060001-p1.jpg