・男は含み笑いをしながら「90人殺害」を告白した

30年かけて、全米各地で90人を殺害したと自供した殺人犯、サミュエル・リトル。FBIが「米国史上最悪の連続殺人事件の一つになるかもしれない」と発表した。その告白の様子を米紙「ニューヨーク・タイムズ」が伝える。彼には罪悪感のかけらもない。

・犠牲者はすべて貧しい女性

何週間もの間、ほぼ毎日、糖尿病と心臓病を患っている白髪の車椅子の男は、テキサスの刑務所の檻から厳重警護のもと、インタビュー室に護送され、その悪事について語った。

当局が伝えるところによると、彼は日ごとに、昔の殺人事件について、顔、場所、小さな町の様子などを詳しく述べ始めたという。彼はバー、ナイトクラブ、道路沿いで、すきのありそうな女性をハントし、車の後部座席に連れ込み絞殺した。

捜査官たちが言うには、78歳になるその男、サミュエル・リトルは約半世紀にわたり90人以上を殺害したと告白。リトルはすでに、1980年代ロサンゼルスで3人の女性を殺害した罪で判決を言い渡されているが、当局は少なくとも14の州で女性を殺害したとして嫌疑をかけている。捜査官はこれまで約30の殺人事件についてリトルの関与を立件しており、彼の自白に疑う余地はほとんどないとしている。

「我々のここまでの調べで、サミュエル・リトルはアメリカ史上、最多の連続殺人を犯した1人であることが判明しました」とテキサス州エクター郡の地方弁護士、ボビー・ブランドは語る。エクター郡はリトルが1994年の殺人事件で2018年の夏に大陪審に起訴された後に拘束されているところだ。

アメリカの連続殺人のなかで、これまで最も多くの有罪判決を受けたのは、“グリーン・リバー・キラー”と呼ばれるゲイリー・リッジウェイ。1980年代から1990年代にかけて49もの殺人事件で有罪とされた。
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なぜ連続殺人犯は、誰にも気づかれず何年もの間、殺害を繰り返せるのか?困惑するばかりだ。しかし有能な警察でさえ殺人事件の約4分の3しか解決できていないのが現実だ。

つまり、それは何千人もの殺人犯が毎年逃げまわっているということだ。また、リトルの場合、多くの州にわたる広範囲で事件を起こした。リトルが殺害したとされる女性の多くは貧しく、薬物やアルコール、あるいはその両方の中毒に陥っていた。彼女たちは、数週間行方不明でも報告されず、他の事件よりも調査への情報源が少ない。

・淡々と、時には含み笑いを見せながら…

刑事司法制度で何年にもわたり収集されたDNAが鑑定され、初めて殺された女性の何人かとリトルがつながった。

そして今年、テキサスレンジャー(テキサス州ハイウェー・パトロール)の一員であるジェームス・ホーランドという名の男が、リトルの“お眼鏡にかなう”ことが出来た。

それから、次々と事件の詳細がリトルの口からついて出てくると、全米各地から迷宮入り事件の調査に乗り出す訪問者が興奮気味にテキサスへ向かった。

ただ、テキサス州当局によれば、リトルはこの記事のインタビューには応えられないとのこと。また、最近彼の代理人となった公選弁護人もコメントを拒否した。

捜査当局が言うには、リトルの告白に弾みがついている理由の一つには、ロサンゼルスの刑務所の騒々しい、混沌とした環境よりは、エクター郡の刑務所の方を好んでいるということもあるようだ。彼と話した調査官によれば、リトルは数十年間誰にも話すことがなかった、殺人犯だけが知っている情報を明らかにすることで注目され、それを楽しんでいるようにも見えたと言う。

何週間か経ち、新事実や詳細が浮かび上がると、F.B.I.と共にかなり多くの当地捜査官がテキサスに向かい、リトルと直接面談にのぞんだ。

当局が言うには、殺害について話す際、リトルは自責の念など一切見せはしない。彼は何年も前に殺害した女性の遺体遺棄場所、ピーカンの木の根元にある穴に設けられた大型ゴミ容器に捨てたことなどを詳細に説明する。

リトルは自分のしたことについて淡々と語り、時には含み笑いすら見せたそうだ。しかし、時には、興奮しながら早口で喋ることもあり、理解するのがたいへんだったという。

「生涯でほとんど見ることのない悪をそこに見るでしょう」とロサンゼルス警察署の迷宮入り事件担当刑事のティム・マルシアは振り返る。彼はリトルが有罪判決を受けた3件の殺人事件でリトルを逮捕した刑事だ。

「彼の目を見たらわかります。あれこそ邪悪です」

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2018.12.2 クーリエ・ジャポン
https://courrier.jp/news/archives/145053/