シリアのアサド政権軍が反体制派支配地域の南部ダルアー県への攻撃を強化し、空爆が始まった6月19日以降、
30日までに市民の死者が126人に達した。在英民間組織・シリア人権観測所が明らかにした。
同県は昨年7月、米国とロシア、シリアの隣国ヨルダンが避難民保護などを目的に
「緊張緩和地帯」(安全地帯)設置で合意した場所の一つだが、政権側は「テロリスト掃討」の名目で空爆を再開し、
停戦合意は事実上形骸化している。

 同観測所や国連によると、ダルアー県では16万人が避難を開始し、
ヨルダンやイスラエルの国境方面などに向かったという。
だが2011年のシリア内戦開始以降、既に多くのシリア難民を受け入れているヨルダンは
これ以上の受け入れを拒否する姿勢を示しており、
ヨルダンのサファディ外務・移民相は「ヨルダンには既に130万人のシリア人が流入し、
受け入れは限界に達している」と述べた。避難民がさらに増加した場合は深刻な人道危機も懸念されており、
ヨルダンやイスラエルは30日までに国境近くに押し寄せる避難民に対して食糧や医薬品、衣類など支援物資の供給を始めた。

 シリア内戦は現在、ほぼ全土でアサド政権が優位を確立。
反体制派の拠点はダルアー県や北西部イドリブ県などに限られている。11年3月、
ダルアー県ではアサド政権を批判する落書きをした少年が治安当局の拷問を受けたことに対する大規模な抗議デモが発生。
それが内戦に発展する契機となり、同県は現在も反体制派の主要拠点となっている。
反体制派活動家の男性は毎日新聞の取材に「アサド政権は、反体制派拠点を一つずつ徹底的に破壊する。
ダルアーの次の標的はイドリブかもしれない」と不安を口にした。

 ロイター通信などによると、アサド政権の後ろ盾となっているロシアは6月30日、
反体制派武装勢力との間で戦闘停止に向けた協議を開始。ダルアー県を離れてイドリブ県に逃げるよう呼びかけたが、
反体制派が難色を示し、協議は難航しているという。

 アサド政権は今年4月、首都ダマスカス近郊の東グータ地区を制圧した際も、反体制派勢力にイドリブ県への撤退を求めた。

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毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180702/k00/00m/030/042000c