■イギリスの調査で26歳になっても8人に1人は未経験。行きずりの関係さえ持たない理由とは

今どきの若者は、上の世代に比べて一貫してセックスに「奥手」──イギリスで行われた調査でそんな傾向が明らかになった。
理由は1980〜2000年頃に生まれたミレニアル世代の「深い関係への恐怖心」にあるかもしれない。

ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ(UCL)のプロジェクト「
ネクスト・ステップス」では、ミレニアル世代に属する1989〜90年生まれの若者1万6000人以上を対象に、
彼らが14歳の時から継続して調査を行っている。この調査によれば、彼らは上の世代と比べ、なかなかセックスに及ぼうとしない。
16年に行われた聞き取り調査では、当時26歳の調査対象者たちの8人に1人がセックスの経験がないと答えたという。

専門家の中には、これをソーシャルメディアや生活のすみずみまで浸透した
インターネットやハイテク機器の影響や道徳観の問題というより、
性に関する情報やポルノが社会にあふれているせいではないかと考える人々もいる。

「ミレニアル世代は性に積極的すぎる文化の中で育ってきたが、そうした文化は(逆に)深い関係への恐怖心を育てる」と、
心理療法士のスザンナ・アブジはサンデー・タイムズ紙の取材に答えて語っている。
「女性は美しいしまった体で常にやる気、男もいつもびんびんという(前提の)文化だ。これは若い人たちにとってはきつい」

■体だけの関係よりメッセージだけの関係

アブジはこうも言う。「そうしたイメージに自分を合わせられないせいで恥をかくのでは、と若い男性は恐れている。
また、フェイスブックの仲間たちにそれがバレてしまうのも怖いのだ」

13年にUCLが行った別の調査でも、今回の調査と似た結果が出ている。
この調査によれば16〜44歳の1カ月あたりの性行為の平均回数は男性で4.9回、女性では4.8回だったが、
10年前にはそれぞれ6.2回と6.3回だったという。回数が減った理由については、
IT機器との「深い関係」や、他人と深い関係になることへの恐怖までさまざまな仮説が立てられている。

作家のテディ・ウェインはかつてニューヨーク・タイムズ紙にこう書いた。
「テクノロジーを好み、(人間関係への)深入りを恐れるミレニアル世代の間では体の関係に及び腰になる人が増えている。
その代わりにバーチャルな擬似的関係を選び、電話やコンピューター経由でたわむれあう。
体だけの関係よりもメッセージだけの関係というわけだ」

深い人間関係に及び腰になっている要因として、ミレニアル世代の抱える
「取り残されることへの恐怖(FOMO=fear of missing out)」や進学しなければというプレッシャー、
他者からの批判を受け入れられない傾向などを挙げる専門家もいる。

「ミレニアル世代は親からも教師からも大事にされすぎたために、他人の意見や他人にとっての現実を受け入れられない」と、
ジャーナリストのローリ・ゴットリーブはアトランティック誌に書いている。
「そうなると、自分の現実が新鮮な野菜を買いに行って体にいいサラダを作ることなのに対し、
パートナーの現実はテレビゲームで遊ぶこと、という状況では2人の関係は難しくなる」

今回の調査で経験の有無を答えなかった人々の数も合わせるなら、26歳までに未経験の人の割合は6人に1人となる。
また、年齢が上がるにつれセックスのパートナーがいる割合が減ることや、
上の世代と比べて独身のままでいる期間が長い傾向があることも明らかになっている。

関連ソース画像
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ニューズウィーク日本版
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