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■ベトナム政府、謝罪や補償求めず

 「ソンミの人々は痛みを乗り越え、米国の訪問者を受け入れてきた。過去を閉じて未来へ向かうことは、
党と政府のみならず個々のベトナム国民の生き方でもある」。式典で地元クアンガイ省の当局者があいさつした。
周辺ではデモなどの動きもなかった。

 ベトナム政府は米国などに戦争被害の謝罪や補償を求めていない。
京大大学院の伊藤正子准教授(ベトナム現代史)は「謝罪や補償に国民の関心が及び、
対戦国への感情が悪化して外交に影響が出ることをベトナムは懸念している。
逆に『過去を閉じて未来へ向かおう』というスローガンを国民に貫徹させ、記憶にふたをしようとしている」と話す。

 米国はベトナムにとって繊維製品などの輸出先で、最大の貿易相手国だ。
韓国もサムスンなどが対ベトナム投資に力を入れてきた。

 米調査機関ピュー・リサーチ・センターが2017年に実施した意識調査によると、
ベトナム人の84%が米国に「好意的」と回答。
また15年の調査ではベトナム人の80%以上が韓国に「好意的」との結果だった。

 旧ソンミ村で住民支援を続ける財団代表のチュオン・ゴック・トゥイさんは
「忍耐強く、利他的なのがベトナム人の気質だ。
逃げた人を責めても、謝罪に戻ってきた人まで追及しようとしない」と話す。

 「ベトナム人に権利意識が根づいていない」との見方もあり、
国策に反してまで補償を求める動きは高まりにくいようだ。

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 〈ソンミ村の虐殺〉 1968年3月16日朝、
ベトナム中部クアンガイ省ソンミ(現ティンケ)村にカリー中尉率いる米軍部隊がヘリコプターで降り立ち、
無抵抗の村民504人を殺害、家を焼き払った事件。69年に米誌などが報じて世界に衝撃を与えた。

朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASL4244FTL42UHBI00H.html