相手国にひっそりと忍び込み、中枢の情報を入手して自国に伝える諜報員(スパイ)は、
今この瞬間にも世界中に散らばって活動を行っています。
スパイにとって最重要事項の一つが「正体がバレないこと」であるわけですが、
その「正体」が今後はある特定の人物ではなく「人工知能(AI)」になろうとしています。

CIA plans to replace spies with AI
https://thenextweb.com/artificial-intelligence/2018/04/23/cia-plans-to-replace-spies-with-ai/
https://i.gzn.jp/img/2018/04/29/cia-ai-spy/00_m.jpg
フロリダ州で開催されたインテリジェンス関連のシンポジウム「2018 GEOINT」で登壇した、
アメリカ中央情報局(CIA)の技術開発担当官であるドーン・マイヤーリックス氏は、
CIAでは「スパイ」の活動が従来の人物ベースではなく、
コンピューターなどの機械が主なものになるという今後の見通しを聴衆に対して述べました。
すでにそのような諜報活動を行い、
かなりの部分を依存している国は世界にいくつも存在しているともマイヤーリックス氏は述べており、
人間のスパイが従来どおりの方法で水面下の活動を行うことが難しくなってきていることを明らかにしています。

もはや「ジェームス・ボンド」や「イーサン・ハント」のようなスパイは時代遅れともなりつつある状況というわけですが、
CIAもその状況に手をこまねいているわけではありません。世界中の国にスパイを送りこんで情報を集める従来の方法から、
CIAは同じ活動をコンピューターでより効率的に遂行するための技術開発を水面下で行っているとのことです。

しかもそれは、過去数年で急に始まったものというわけではありません。
CIAでは、30年以上も前からコンピューターを使った諜報活動技術に目を向けて取り組みを進めてきています。
情報公開法によって機密を解除された、CIA長官とAI運営グループに対する1984年の内部メモでは、
AIを使った自然言語処理や情報データベースのインターフェース、
画像認識、信号傍受、地理および空間データマネジメント、
諜報ワークステーションの環境構築など実を結び始めていることが記されています。

(PDF)ARTIFICIAL INTELLIGENCE INITIATIVES - CIA-RDP86M00886R000500040004-2.pdf
https://www.cia.gov/library/readingroom/docs/CIA-RDP86M00886R000500040004-2.pdf
https://i.gzn.jp/img/2018/04/29/cia-ai-spy/01.png

まだまだコンピューターの性能がそれほど高くはなかった1980年代から、
CIAではAIを使った諜報活動技術の開発が進められており、
徐々に結果を出し始めていたことが伺える内容となっているわけですが、
そこから繋がる現代はさらに技術が進歩しています。スパイがいくら偽造した文書で身元を偽り、
よく仕立て上げられた偽物の情報で相手を欺いたとしても、
街中の監視カメラを解析して身元を一瞬で割り出すことが可能な監視システムを欺くことは容易ではありません。

マイヤーリックス氏によると、
すでに世界30カ国以上で国中の監視カメラを使ったスパイ防御システムを導入している国が存在しているとのこと。
こうなってくると、人間のスパイが社会に紛れ込んで行う諜報活動は大きく制限されることとなり、
今後はさらに電脳空間内での情報争奪戦が加速するとみられます。

すると今度は、そのAIスパイを検知し、だまして誘導し、偽の情報をつかませたり活動元の情報を取得して返り討ちに遭わせたりするシステムが作られることは容易に想像できます。日進月歩で技術開発が進められる諜報技術の世界も、その根底は人間によるスパイ活動と大きく変わるものではないのかもしれません。

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180429-cia-ai-spy/