シリアのアサド政権軍が首都ダマスカス近郊の反体制派支配地域・東グータ地区に地上部隊を進攻させてから1週間が過ぎ、7日までに同地区の4割以上を反体制派から奪還した。国連安保理が2月下旬に採択した停戦決議は既に形骸化し、戦闘の収束は見通せない。「地上の地獄」(グテレス国連事務総長)と評される人道危機下での死者数も増加の一途をたどっている。
 在英のシリア人権監視団によれば、政権側の攻撃が一段と強まった2月18日以降の死者は800人を超えた。今月5日には80人以上が死亡し、化学兵器の使用が疑われる攻撃も発生。安保理決議後だけでも犠牲者は約270人に達する。
 政権軍は2月末、シリア内戦で数々の戦功を挙げてきた精鋭部隊を中心に東グータに進攻し、ロシア軍の空爆支援と合わせて制圧地域を拡大。アサド大統領は「対テロ戦を続ける」と述べ、首都を脅かす反体制派の壊滅に自信を見せる。
 東グータでの交戦の構図は、2016年12月にアサド政権が奪還した北部アレッポと酷似する。激戦地だったアレッポでは、政権軍が反体制派の占拠する市東部を包囲。地上戦の末に制圧し、反体制派戦闘員らを北西部イドリブ県に移動させた。東グータでも、ロシアが反体制派に家族らと共に「安全な回廊を通じた退避」を提案したが、反体制派は「強制移住の試み」と拒んでいる。
 イドリブ県では国際テロ組織アルカイダの流れをくむイスラム過激派が勢力を維持し、政権軍とにらみ合いが続く。シリア人権監視団のアブドルラフマン代表は「敵をイドリブに集め、そこを最終的に攻撃するのが政権の戦略だ」と話している。
jiji
2018年03月07日15時14分
http://www.jiji.com/sp/article?k=2018030700765&;g=int