<カリフォルニア州では、近い将来、「コーヒーには、
発がん性のある化学物質が含まれています」という注意喚起表示が義務づけられる可能性が取りざたされている>

日本のみならず、世界中で愛飲されているコーヒー。
アメリカの世論調査会社ギャラップによると、米国人のおよそ3分の2がコーヒーを一日に最低一杯は飲んでおり、
コーヒー愛飲者の一日あたりの平均摂取量は2.7杯にのぼるという。

〈コーヒーは健康に寄与していることもわかってきたが・・〉

コーヒーについては、長年、様々な研究を通じて、私たちの健康に寄与していることもわかってきた。
日常的にコーヒーを摂取することで、循環器疾患、アルツハイマー病やパーキンソン病、
前立腺がん、皮膚がんのひとつである悪性黒色腫の発症リスクを軽減できることが示されている。

その一方で、米カリフォルニア州では、近い将来、カフェをはじめ、コーヒーを消費者に提供するすべての事業者に、
「コーヒーには、発がん性のある化学物質が含まれています」という注意喚起表示が義務づけられる可能性が取りざたされている。

〈高温で焙煎したコーヒー豆にも発ガン物質が?〉
発がん性のある化学物質として指摘されているのが、揚げる、焼く、焙るなど、
穀物や植物を120度以上の高温で加熱することにより起こる"メイラード反応"で生成される「アクリルアミド」だ。

2002年にはスウェーデン大学らの研究チームによって、
じゃがいもを揚げたポテトチップスやフライドポテトなどのほか、高温で焙煎したコーヒー豆にも、
高濃度のアクリルアミドが含まれていることが明らかになっている。

ヒトにおいてアクリルアミドが発がん性を持つという十分な証拠はまだ見つかっていないものの、
世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)では、
アクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある物質(グループ2A)」と分類している。

〈消費者への注意喚起を求める訴訟が起こされた〉
2010年には、カリフォルニア州のロサンゼルス郡上級裁判所において、
非営利団体「CERT」が、スターバックスやセブンイレブンなど、飲食チェーンや小売チェーンを相手取り、
コーヒーにアクリルアミドが含まれていることを消費者に注意喚起し、
コーヒー豆に含まれるアクリルアミドを安全なレベルまで軽減させるよう求める訴訟を起こした。

「プロポジション65」と呼ばれるカリフォルニア州法では
「事業者は、健康を害する物質について"明確で合理的な注意喚起"を消費者に行わなければならない」と定めており、
原告側は「被告がこの法的義務の履行を怠った」と主張している。

被告のうち、セブンイレブンなど、少なくとも13社がすでに和解し、
罰金の支払に加え、コーヒーに含まれるアクリルアミドについての消費者への注意喚起に応じており、
2018年2月には、残りの事業者とも和解交渉が行われるという。
すべての被告が和解に応じない場合でも、2018年内には、判決が下る見通しだ。

カフェやファストフードチェーン、コンビニエンスストアなど、カリフォルニア州のいたるところで、
コーヒーに関する注意喚起を見かけるようになるのもそう遠い未来の話ではなさそうだが、
この動きが米国の他の地域にどのように影響していくのだろうか、その動向にも注目したい。

関連ソース画像
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ニューズウィーク日本版
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