米判決の適用却下

マルコス人権被害者への補償を認めた米連邦地裁判決の適用申請を控訴裁却下

[ 1014字|2017.7.17||社会 ]

補償金のキャッシュカードを受け取る人権被害者=5月8日午後1時半ごろ、首都圏ケソン市のフィリピン大でアラーナ・アンビ撮影
http://www.manila-shimbun.com/category/society/news231506.html

 控訴裁判所はこのほど、マルコス政権下の人権被害者約1万人に対して総額20億ドルの補償金支払いをフィリピン政府に命じた、米ハワイ連邦地裁判決の比国内での適用を求めた確認訴訟で、人権被害者ら原告の訴えを却下したマカティ地裁判決を支持する判断を下した。
 マルコス人権被害者への補償金支払いは、共和国法の施行を経て今年5月上旬から一部被害者に対する支給が開始されたばかり。海外の裁判所で下した補償金支払い命令を却下する判決が国内で続けて出されたことで、人権被害者数の範囲や補償金額を巡る議論が再び高まる可能性がある。 
 控訴裁判所第12部(ピサロ裁判長)はまず、マルコス人権被害者約1万人に対して総額19億6400万ドルの補償金支払いを比政府に命じた1995年2月3日の米ハワイ連邦地裁判決について、主権の及ばない外国政府に対する判決は法的効力を持たないと指摘。
また、集団訴訟の取り扱いにもかかわらず原告の被害申告内容を拷問や殺害、強制的失踪の三つのカテゴリーに分けて判断していることや、代表者を除く原告の多くから委任状が取得されていないことなど、米ハワイ連邦地裁の裁判手続きに不備があったとも指摘し、判決は無効だと結論づけた。
 比ではマルコス人権被害者に対する補償金支給がようやく動き出したばかり。人権被害者審査委員会は5月8日、首都圏ケソン市のフィリピン大学で人権被害者317人に対し補償金の支給を実施。
当日には30年以上にわたり補償金を待ち続けていた高齢の人権被害者たちが家族らに付き添われながら校内に設けられた同委員会のブースで補償金額が入金されている銀行口座のキャッシュカードを受け取った。同委員会は3月、人権被害者約4千人に対し、補償金計約3億ペソを支給すると発表している。
 同委員会は拷問など被害の度合いなどを審査した上で補償金額を決定、被害者一人当たり2万5千ペソから7万5千ペソを支給する予定。しかし、戒厳令下に不当逮捕され長期間にわたり収監され拷問を受けたり、仲間を殺されてきたりした人権被害者にとって、この金額は補償金として足りないとの議論が出ている。
 これに対し1人当たり約20万ドルの補償金を認めた米連邦地裁判決は人権被害者らを勇気づけた経緯があるほか、被害者として認定した補償対象範囲を広めた意義も大きく、今後、政府の進める補償金支給プログラムにも影響を与える可能性がある。(澤田公伸)

Copyright (c) The Daily Manila Shimbun