難民認定申請の審査、精神的苦痛から薬物に アフガンの若者たち

スウェーデンのウプサラで、若者と話す警察官(2017年5月15日撮影)。(c)AFP/AFPTV/CAMILLE BAS-WOHLERT
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2017年06月08日 17:48 発信地:ウプサラ/スウェーデン
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【6月8日 AFP】スウェーデン中部の駐車場ビルに散乱するビールの空き缶や嘔吐(おうと)物まみれの新聞紙、そしてアルミホイル──これは難民認定申請中のアフガニスタン人たちが寒さをしのぐためにここに入り、そしてヘロインを吸ったことを示す残骸だ。

「ヘロインを吸ってると…落ち着くし、不安が消え去る」とAFPの取材に語るのは16歳の青年マフディさん。彼はスウェーデンに来てからヘロインを覚え、そのまま依存するようになったという。

 首都ストックホルム(Stockholm)から車で北に1時間ほどの距離に位置する学術都市ウプサラ(Uppsala)は、保護者がいない18歳未満の難民約1000人の受け入れを表明している。

 うち100人ほど――そのほとんどがアフガニスタン人だ――は、平均で1年以上かかる難民認定申請の手続きを待つ間に、ヘロインの使用が見つかり、身柄を拘束された。これらの若者の間でドラッグがまん延していることについては、スウェーデン当局も把握している。

 首都ストックホルムでは2016年、少なくとも難民認定申請中の若者1000人が薬物依存症の治療を受けた。保健当局はそのほとんどが未成年の男子だと指摘するが、彼らの国籍については言及を避けた。

 ウプサラ警察で麻薬取り締まりの担当責任者を務めるアンデルス・ニルソン氏(38)は、この流れを問題視し、私服警察官のチームと共に、若いヘロイン依存症患者を救うべく、日々市内を監視している。

 他方で、社会福祉当局のヒルデ・ウィーベリ氏は「難民認定申請の結果を待つのはとてもつらいこと」であると指摘し、多くの難民認定申請者が過去のトラウマ(心の傷)が原因で精神的に不安定な状態にあることを補足した。

■強制送還、そして殺害のリスク

 マフディさんはヘロイン依存症を克服し、スウェーデンの永住権を取得した。「(もし)永住権がなければ…アフガニスタンに強制送還される」と彼はAFPに語った。

 アフガニスタンに戻るということは、旧支配勢力タリバン(Taliban)、もしくはイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から狙われ、殺害されるリスクにさらされることを意味する。

 スウェーデンで難民認定を申請する保護者不在の未成年では、アフガニスタンの出身者が最も多い。難民認定される割合は約80%に上るという。移民局によると、今年はこれまでに1321件の難民認定申請が受理されたが、うち200件が却下されているのみという。

 ヘロインの所持および使用については、常習でない限り難民認定の申請に悪影響を及ぼすことはない。ただ、犯罪行為に関してはその限りではないとウプサラ警察のダニエル・ラーション(Daniel Larsson)警視は注意を促す。

■治療が唯一の選択肢

 こうした若者たちがヘロインを買う金欲しさに犯罪行為に手を染めるケースは少なくないという。

 難民認定申請者がヘロインの使用で身柄を拘束された場合、尿検査を受け、その結果次第では社会福祉課の監督下に置かれることになる。ただし、刑務所に収容されることはない。

 ニルソン氏は、ヘロイン依存症患者には治療を受ける以外に選択肢はないことをAFPに説明した。

 難民認定申請者が重度のヘロイン依存症の場合、スウェーデンの国内各地にある治療専門施設に送られる。しかしニルソン氏によると、こうした施設もすでに過密状態にあるのだという。

■「本当に幸せ」

 保護者不在のクルド人難民認定申請者であるサリムさん(17)にとって、無償で教育や医療を受けられるスウェーデンは理想の環境だ。

 彼はまだ難民認定申請の受理を待っている状態だが、スウェーデンに滞在することができて「本当に幸せ」だと語る。スウェーデンが2015年に受け入れた難民の数は、国民1人あたりで見ると欧州で最も多かった。

 今は家族に会えなくて寂しいと話すサリムさん。保護者不在の未成年でも、問題を抱えてさえいなければドラッグにおぼれることはないはずだと語気を強める。しかし、その直後に「問題を抱えていない人なんてここには一人もいない」と述べ、そのまま下を向いてしまった。(c)AFP/Ilgin KARLIDAG