「いい話だな」と思っても、原作をそのまま漫画にはできない
『あしたのジョー』ちばてつや氏の「伝える」こだわり

DAY2 【ちばてつや×小林琢磨】ちばてつや氏が、いま漫画家に伝えたいこと #2/3
漫画家ミライ会議2022 〜漫画が、拡張する。〜
2022年12月15日〜2022年12月16日に開催


ナンバーナイン主催で開催された「漫画家ミライ会議2022」より、『あしたのジョー』の作者である漫画家・ちばてつや氏と、ナンバーナイン小林琢磨氏、小禄卓也氏が登壇したDAY2のセッションの模様を公開します。テーマは「ちばてつや氏が、いま漫画家に伝えたいこと」。
漫画家として66年活動し続けるちば氏より、活動し続けるための環境の作り方や、若い未来の漫画家へのアドバイスについて語られました。本記事では、ちば氏から見た「才能」について語られました。


スピーカー

ちばてつや
漫画家

小林琢磨
株式会社ナンバーナイン 代表取締役社長

小禄卓也
株式会社ナンバーナイン 取締役CXO
フォロー


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『あしたのジョー』ちばてつや氏が語る、漫画家人生の分岐点 ふらふらになる主人公・矢吹丈と自分を重ねた、30代の苦悩
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同じ世代、若い世代の才能を目の当たりにして落ち込んだ

小禄:次のテーマは「ちばてつやと才能」ですね、漫画家としてずっと活動されてきて、いろんな才能とご一緒してきた方でもあるのかなと思っています。ちばさんの中で、ライバルがいらっしゃったのか。

ちば:そうですね。私がデビューした頃、単行本では17歳だったけど、大きな雑誌社では『少女クラブ』とか『なかよし』とか。最初は少女漫画だったんですけど。

小禄:そうですね。少女漫画家としてデビューされていますから。

ちば:その頃は18、19歳、20歳ぐらいだったかな。私は一番若かったんですよね、漫画家として。私より若い漫画家はいなかった。

そのうちに水野英子さんという人なんかが徐々に出てきて、里中満智子さんなんて16歳でデビューして。私より少し年下の漫画家さんも出てきたけど、その当時はみんな先輩でしたね。

同じ世代の年代の仲間たちもたくさんいましたけど、少しずつ年上なんですよ。松本零士にしても、石ノ森章太郎にしても、赤塚不二夫にしても、みんな私よりちょっと年上なの。だからみんなお兄ちゃん。上田トシコさんみたいな、10歳ぐらい年上のお母さんみたいな人もいました。だからいつも私は後輩でいたんです。

そのうちに、だんだんだんだん自分と同い年、あるいは自分より若い人たちがどんどん出てきたので、すごく頼もしくてうれしかった。反面、みんな絵が上手だったりおもしろい話を作ったりするから、ドキドキハラハラして、同じ雑誌に載っていたりすると、自分の作品はあんまり見ないで、すぐに仲間、友だちの作品を読んで。

おもしろいと、もうハラハラしてね。「ああ、これは負けた。こいつはいい才能を持っているな。この人にも負けた。こいつにも負けた。あいつにも負けた」と言って、すごく落ち込んだりすることもありました。だから同業者が出てきたら心強くてうれしかったんだけど……。

小禄:うれしい反面。

ちば:また、ライバルでもあったわけね。





ちばてつや氏から見た、レジェンド漫画家たちの才能
https://logmi.jp/business/articles/328075