マグミクス2022.10.08
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■意外と破壊される黄金聖衣
1986年に連載開始され、2022年の現在までに5000万部を超える大ヒットを記録した少年マンガ『聖闘士星矢』。ギリシャ神話を題材とした壮大な世界観や、星座をモチーフとした鎧「聖衣(クロス)」、人間の内に眠る小宇宙(コスモ)を爆発させて奇蹟を起こす戦闘描写などが人気を博して、世界的に話題となった人気作品です。

その聖闘士のなかでも特に人気なのが、12人の黄金聖闘士です。彼らは光速の動きを持つ、圧倒的実力者として君臨しています。身にまとう黄金聖衣は「神話の時代より、一度も破壊されたことがない」と言われるほどの圧倒的強度を持つ……設定なのですが、劇中ではけっこう壊れます。

聖闘士のなかでも最低ランクの青銅聖闘士である、天馬星座の星矢は、黄金聖闘士・牡牛座のアルデバランが被る兜の角を、手刀でへし折ります。また、双子座の黄金聖闘士サガは、自分の罪を償うために、黄金聖衣の胸部を手で突き、聖衣を破壊して自害しました。

「ポセイドン編」でも、ポセイドンに跳ね返された射手座の矢は、射手座の黄金聖衣を貫通して、星矢にダメージを与えています。その後、星矢たちは、アテナが封じられた強固な柱であるメインブレドウィナを、天秤座の黄金聖衣に付属する「星をも砕く」武器で攻撃しますが、武器の方が破壊されてしまいます。

「ハーデス編」では、黄金聖衣をまとった星矢たち5人を死の神タナトスが攻撃し、木端微塵に黄金聖衣を打ち砕いてしまいます。いかに神とはいえ、アテナとハーデスは何回も聖戦を戦っていたわけで、ラスボスですらないタナトスが破壊できる黄金聖衣が「神話の時代から一度も破壊されたことがない」というのは不思議な話です。

その理由について、順に考察してみましょう。

射手座の黄金聖衣は当初「まったく違う姿」に偽装されていました。黄金聖衣が「神話の時代から破壊されないほど強固」なら、後からの加工など不可能で、姿を変えられるわけがありません。この時点の沙織は、アテナとしての力をほぼ振るっていませんので「射手座の黄金聖衣が自分の意志で姿を変えていた」のでしょう。

蟹座の黄金聖衣が、装着者であるデスマスクの卑劣な振る舞いに見切りを付け、自ら外れたという事例や、紫龍を落下から守った牡羊座の黄金聖衣が自分から外れたという事例もありますから、黄金聖衣には自らの意志が宿っているのは間違いありません。

つまり、アルデバランが角を折られたのは「牡牛座の黄金聖衣が星矢の実力を認め、アルデバランが『負けた』ことを現すために、自分から折れた」のだと説明できます。

また、考慮すべきは「聖衣は小宇宙を燃やさなくては重いプロテクターに過ぎない」という基本設定です。

サガが自らの胸を突けたのは、戦う意志が全く無くなっていたことで「聖衣がただの重いプロテクター」となり、防御効果を失っていたことも考えられます。もしくは「自害したい」という装着者の意志を、黄金聖衣の意志が尊重して「胸の部分に穴が空く」ように変形したのでしょう。

「ポセイドン編」の射手座の矢は「矢と聖衣が同じ材質」なので、破損してもおかしくはありません。また、矢にはポセイドンの神の意志が宿っていましたから、人知を超えた神の力が黄金聖衣の防御力を越えたとも考えられます(この時点でアテナはメインブレドウィナに封じられていたので、加護が弱まって防御力が低下していた可能性もありますが)。

注目すべきは、ポセイドンの海将軍のひとりである「海馬のバイアン」が「海将軍の鱗衣は黄金聖衣に匹敵する防御力がある」と豪語していたことです。

劇中で海将軍の鱗衣は星矢たちに破壊されているので、この発言は「大言壮語」だと思われていますが、実は正しいのかもしれません。ポセイドンも神話の時代からアテナと戦っているわけで、海将軍の鱗衣が黄金聖衣と互角とする発言には、根拠があるはずなのです。海将軍の鱗衣も黄金に輝いていますから、ほぼ同じ材質なのかもしれません。

星矢たちとバイアンたちの違いは「仕えている神の加護」の差ではないかと思われます。この時点の沙織は、アテナとして完全に目覚めており、聖闘士に勝利の加護を与える黄金の杖(ニケ)も持っています。

一方、ポセイドンであるジュリアン・ソロは、眠っているところをカノンに起こされた状態で、完全には目覚めていません。ポセイドンは「目覚めるごとに小宇宙が増大する」との描写もありますから、半分眠っている状態では、海闘士に対する加護が弱くなっており、鱗衣が本来の力を発揮できなかったのでしょう。

星矢たちがメインブレドウィナに到達した時、ポセイドンは目覚めていました。

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