沖縄タイムス2021年6月28日 17:22
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/777313

 人気マンガの「ONE PIECE(ワンピース)」や「進撃の巨人」を超えるコミックが沖縄にある。那覇のジュンク堂書店では両方の最新刊の販売数を上回った。どんなマンガ?

■沖縄が舞台の異文化ラブコメディー
 全国の人気漫画を凌駕し、沖縄でコミック売り上げのトップを突き進むのは、「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる(沖ツラ)」(新潮社)だ。幅広い世代が買い求めるヒット作で、現在は2巻まで販売されている。

マンガの第1話。喜屋武さんのウチナーグチに戸惑う主人公の中村くんを比嘉さんが通訳でフォローする(空えぐみさん提供)
 本土から沖縄に転校してきた男子生徒が恋する相手は、明るく気さくな同級生。ただ、ウチナーグチ(沖縄語)しか話さず、コミュニケーションが取れているようで、取れてなくて振り回されている。通訳してくれる優しい女子生徒は、男子生徒にひそかに思いを寄せる三角関係のラブコメディー。エイサーや時間にアバウトなウチナータイムといった沖縄特有の風習がストーリーの伏線にもなっており、沖縄県民は「沖縄あるある」を楽しんでいる。おもしろおかしく沖縄を知れると県外出身者からも人気という。

■沖縄にハマり、マンガ化と移住を決意
 作者で漫画家の空めぐみさんは大阪府出身。沖縄に興味を持つきっかけは、上京して知り合った沖縄出身の漫画家だった。沖縄のことをよく教えてくれたという。

 「言葉もそうだが、沖縄の人は海で泳がないなど、日常生活ですら違いがあって、話を聞いてるだけでも驚きの連続だった」と振り返る。うれしそうに沖縄の話をする沖縄出身の漫画家を見て、「沖縄っていいところなんだろうなとすり込まれた」と笑う。

「沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる」1巻と2巻をPRする空えぐみさん
 その漫画家が3カ月に1回と頻繁に帰省するところにも郷土愛を感じた。「帰省ってだいたい正月かお盆の年1回くらい。それを飛行機なのに、年4回も帰るってすごいなと感じた。これはもう実際に行って、マンガを描いてしまおうと思い立った」と3年前に、沖縄本島のうるま市に移住した。「祖父が沖縄出身というルーツもあって強く惹かれたと思う」と話した。

■沖縄語は方言ではなく、1つの言語
 地方を舞台にしたマンガでは、その土地の方言をストーリーのアクセントに使うことが多い。ただ、空さんは「沖縄は方言でなく、ウチナーグチという1つの言語。ぼくも含めて県外の人は、まったく理解できない。そうであれば、ウチナーグチを軸にストーリーを描こうと考えた」。

 例えば作中では、県外から転校してきた中村照秋に気さくに話しかけてくれる同じクラスの喜屋武ひなの言葉はウチナーグチばかり。

「くるざーたーかむんな?(黒砂糖食べる?)」

「さっきのかたぶい、でーじだったね(さっきの豪雨たいへんだったね)」。

 それを通訳してくれる同じクラスの比嘉かなは、中村のことが気になっている。マンガでは、沖縄と本土との言葉や文化、風習の違いに戸惑いながらも仲を深めていく3人が楽しく描かれている。

マンガを描く空えぐみさん
 空さんは、三角関係のラブコメディーになったきっかけは「ウチナーグチの必然」とにやり。ヒロインはウチナーグチしか話さないと決めると、相手役には県外から転校してきた男子生徒が浮かんだ。そうすると、2人に通訳するヒロインが必要になり、自然とキャラが3人生まれたという。「じゃあもう三角関係がいいだろうと、ウチナーグチを起点に順を追うように枠組みができあがってきた」という。

 マンガの話題は、地域の人たちとの日ごろの触れ合いからヒントを得ている。「マンガを連載する前から、家にご飯を誘ってくれたり、旧盆やシーミーにも呼んでくれたり、とても優しくしてくれて感謝している」とのこと。

 空さんは、エイサーやビーチパーティー、台風の時の過ごし方といった沖縄特有の文化と慣習に今でも驚くことが多いといい、「沖縄に住んでいて直に沖縄の文化を感じながら、本土の目線を持つ絶妙な立ち位置で、沖縄の魅力やおもしろさを引き出していきたい」と話した。

■沖縄の本屋もイチオシ
 ジュンク堂書店那覇店では1巻から売れ行きが好調で、2巻が発売された2月には平積みのコーナーを設けて大々的にPRしている。そして「沖ツラ」は、4月に第7回沖縄書店大賞で沖縄部門の準大賞に選ばれた。コミックとしては初めての入賞だ。

(以下リンク先で)

https://news.yahoo.co.jp/articles/67bcc43ad45b3e68dae78e2a60a86a73112853d1/images/000