朝日新聞デジタル2021年4月8日 15時30分
https://www.asahi.com/articles/ASP4831VMP47UHBI04M.html

 南米ペルーで今月11日投開票の総選挙に出馬した女性候補が、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターのコスプレ姿で動画配信し、注目を集めている。歴代大統領が相次いで捜査対象となり、政治不信が高まっているペルーで、若者の政治参加を促そうという試みは成功するのか。

 インターネット会議システムでつないだ画面に現れたペルー国会議員候補、ミラグロス・フアレスさん(31)は赤いレオタード姿だった。レオタードの柄は、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場するキャラクター、惣流・アスカ・ラングレーのパイロットスーツ。「当選したらコスプレで登院する」と笑った。

 背景には、スペイン語で「オタク・パラ・トドス」(すべての人にオタク文化を)と書かれた横断幕。公約の一つだ。「私の国では、アニメ好きへの強い偏見がある。ペルー文化省がアニメやコスプレなどオタク全般を文化活動として認めることをめざしています」と語る。

 首都リマ市内の選挙区から立候補した。政治活動を始めたばかりのフアレスさんが注目されたのは、今年1月、インターネットに投稿した動画がきっかけだった。アスカのコスプレで、エヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」を日本語で歌い、政治批判や主張をスペイン語で歌詞のように表示した。

 これが受けた。インスタグラム、ツイッター、フェイスブック、ユーチューブなどで数万回再生された。ソーシャルネットワーク(SNS)ばかりではなく、ポルノも扱う課金制の配信サイトも使い、政策を訴える。ペルーを中心に、複数のメディアから「新しい選挙運動」として報道された。

 所属政党は、子どもに対する性的暴行には死刑を科すべきだなど、ペルー社会で過激と受け止められる主張をしている。フアレスさんは、「時代遅れの硬直した政治家にはできない主張を、より遊び心のある方法で若者に理解してもらう必要がある。(SNSを通じて)堅苦しくない、ありのままの自分を見せることができている」と話す。

 出馬の動機は政治不信だ。昨年11月、わずか1週間の間に次々と大統領が代わり、抗議するデモの参加者からは死者も出た。「結局、右派も左派も、政治家は自分たちの政治的野心を満たすことばかり。画面の向こうで文句を言うだけでは何も変わらない。自分で動くしかないと思った」
(以下有料記事)

動画https://youtu.be/7SYJjjPsK7Y