【東京】任天堂と提携するスマートフォン向けゲームの開発会社は、配管工「マリオ」の生みの親が、高い収入を得るまでのルートに障害を設けていることを発見した。

 任天堂は2015年以降、ディー・エヌ・エー(DeNA)などパートナーとの協業で制作するスマホゲームについて、収入分与契約を交わしている。ゲームのダウンロードは無料だが、プレーをスピードアップする特典や、特別なキャラクターを獲得するゲーム内のくじへの参加に課金している。

 特別なアイテムの獲得にプレーヤーが大枚を払う場合もある。だが任天堂の戦略に詳しい関係者によると、同社はそのような行動が自社のブランドイメージを傷つけかねないと懸念し、ユーザーの出費が度を越えないようにゲームを調整するよう提携先に求めている。

 ある任天堂関係者によると、同社はスマホゲームについて、主にゲームキャラクターへの関心を深めてもらい、ゲーム機を使う従来型ゲームの購入にゲーマーを導く手段だととらえている。任天堂はスマホゲームで欲を出し過ぎて批判されることを警戒しているという。

 だがゲームメーカーにとっては、それは収入機会を逸することにもなりかねない。

 任天堂とスマホゲーム「ドラガリアロスト」を共同開発したサイバーエージェントは1月、同ゲームの不振などを理由に、17年ぶりに通期の利益見通しを下方修正した。サイバーエージェントによれば、積極的な宣伝が奏功してドラガリアロストのプレーヤーは増えているが、個々のプレーヤーからの収入は見通しを割り込んでいる。

 昨年9月にドラガリアロストが配信されると、ゲーム内のくじ引きで珍しいキャラクターを獲得するのが難しいとの不満の声がユーザーから上がった。キャラの獲得を試し続けて出費を重ねるプレーヤーが出る可能性があった。サイバーエージェントの関係者の話では、ユーザーの過剰な出費を防ぐため、任天堂からゲームの調整を要請されたという。

 あるサイバーエージェント関係者は「京都(任天堂)は一つのタイトルから大きくもうけることに興味がない」とした上で「私たちだけで運営していたら、もっとたくさん稼げていたと思う」と語った。

 任天堂の広報担当者は、ユーザーの出費についてゲーム開発会社と連絡を取っていることを認めたうえで、「各パートナーとは課金方式のみならず、どうすれば良質な遊びを提供できるか日々協議しながら、協業を進めている」と話した。

 任天堂と組んで「スーパーマリオラン」や「どうぶつの森」など多数のゲームを制作したDeNAは、スマホゲーム事業が不振に陥っている。DeNAの守安功社長兼最高経営責任者(CEO)は先月、同社が手掛けたスマホゲームの大半が苦戦を強いられていると語った。例外は単独で開発した「メギド72」で、このゲームのユーザー収入は好調だ。

 投資家は任天堂のスマホゲーム参入を称賛した。だが同事業の年間売上高目標は1000億円と控えめだ。ソニーの「フェイト・グランドオーダー(FGO)」などランキングの上位に入るゲームの場合、単独でそれ以上を稼ぐ。任天堂の2018年3月期通期のスマホゲームによる収入とその他のロイヤルティー収入は393億円だった。

 任天堂は先月、通信アプリ大手LINEと共同でマリオのキャラクターを使ったパズルゲームを制作していると発表した。任天堂の古川俊太郎社長は、1000億円の達成を目指してプレーヤー数の増加を図る中、スマホゲームのリリースに弾みをつけるため、さらに多くの開発会社との協業に前向きな姿勢を示した。

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ダイヤモンド・オンライン
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