「いま、『さよなら』をしよう。女の子を、苦しめるものから。」。こんなキャッチコピーが、東京メトロ丸ノ内線新宿駅(東京都新宿区)構内に22日に現れた。月刊少女漫画誌「りぼん」(集英社)で連載中の漫画「さよならミニスカート」(牧野あおいさん作)の広告だ。スカートをはくことをやめた主人公を通して、周囲から求められる女性らしさへの違和感や、それでも「女の子」として胸を張って生きていこうとする女子高生が描かれている。

 「さよならミニスカート」は8月に連載スタート。単行本第1巻が今月22日に発売された。主人公は握手会でファンから切りつけられた事件を機にアイドルを引退した女子高生。事件後、元アイドルという肩書を伏せ、男子生徒と同じスラックスの制服で学校に通う。第1巻は変質者や痴漢の被害者が、笑って受け流すことを求められたり、泣き寝入りせざるを得なかったりといった、現実でも起きそうなエピソードが盛り込まれた。可愛く素直であることを当然のように若い女性に求める男たちも描かれる。

 ツイッターでは、自分の体験と作品を重ね合わせる声や、「私がりぼんを購読してたときにあればよかったのに」とのつぶやきが流れた。サブカルチャーとジェンダーに詳しい大妻女子大の田中東子准教授は、「#MeToo運動やセクハラを巡る議論が盛り上がり、女性たちが性の対象として一方的に消費されることにノーをつきつけるようになってきた。この時代に、出るべくして世に出てきた作品」と話す。

 女性らしさを全面的に否定しているわけではない。田中准教授は、「男に媚(こ)び売るために履いてんだろ? スカートなんか」と言う男子に、主人公が「スカートはあんたらみたいな男のために履いてんじゃねえよ」とすごむシーンに注目する。「もてるためではなく、自分自身のために可愛くありたいという感覚が強い、今の若い女の子に響く言葉だ」と指摘する。

 りぼん編集部は特設サイトを開設。連載開始前に一部を無料公開した。トップページには、「この連載は、何があろうと、続けていきます」「少女たちだけでなく、今は大人の女性になった、かつての『りぼん』読者たちをも大切にすることができるまんがだからです」という相田聡一編集長のメッセージを掲げる。

 相田編集長は「とにかく面白い漫画で、一人でも多くの人に届けたいと思った」と意気込む。担当編集の守分紘子さんは「10〜12歳の読者層ど真ん中の子たちが、アンケートやメール、ファンレターで『面白い』と感想をくれる」と明かした。「大人の読者から『この作品を載せてくれてありがとう』という電話が編集部にかかってきたこともある。これほど幅広い反応は予想以上だった」

 メッセージ性の強い漫画だが、相田編集長は「今日的な題材を扱っているが、傷ついたヒロインが、もがきあがいて立ち上がっていく、そんな女の子の強さを描いた物語で、少女漫画の本質に通じるものだ」と説明する。田中准教授も「少女漫画は、『女の子は無力じゃない。キラキラ輝いて強いんだ』というメッセージを読者に伝える役割がある。この作品もそんな少女漫画の王道を行く作品だ」と語った。

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毎日新聞
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