今年は、日本国内のさまざまなメディアで「eスポーツ」が大きく取り上げられている。9月に開催されたアジア競技大会(ジャカルタ)では初めて公開競技に認定され、日本人選手が金メダルを獲得したことも記憶に新しい。日本国内では、2月にeスポーツ普及を推進する新団体「日本eスポーツ連合」が発足。9月の「東京ゲームショウ2018」で開催されたeスポーツ大会の賞金総額は昨年の約20倍となる3000万円規模に及んだという報道もあるなど、「eスポーツ色」が深まっている。

そんなeスポーツだが、米ゴールドマンサックスの報告書によると、世界における市場規模は2022年までに29.6億ドルに達すると予想されており、17年の6.6億ドルのおよそ4.5倍に成長すると見られている。eスポーツ関連の大会や番組の視聴者に伸びしろがあり、スポンサー収入だけでなく、放映権料やグッズ販売などライツビジネスによる売上が大きく成長すると予測されている。

 世界では賞金1億ドル(約110億円)を拠出するeスポーツ大会もあるが、日本市場はまだまだこれからだ。Gzブレインによる報告書によると、17年の海外市場規模は約700億円、eスポーツ大会の視聴者数の規模が3億3500万人だったが、日本の市場規模は5億円未満で視聴者数は158万人だっという。

芸能事務所やテレビ局も参戦
 これからますます成長していくかもしれない市場に目を付け、異業種が続々とeスポーツに本格参入している。3月7日に参入を発表した吉本興業は、「よしもとゲーミング」としてプロチームを複数運営するほか、ゲーム実況に特化したタレントを育成。10月には渋谷にeスポーツ拠点「ヨシモト∞ドーム」を開設すると明かした。また、しばしばテレビ番組でもプロゲーマーの特集が組まれることがあったが、日本テレビも6月にeスポーツ事業に取り組むとして子会社アックスエンターテインメントとeスポーツチーム「AXIZ」の設立を発表している。

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 プロスポーツリーグもeスポーツ大会に期待している。Jリーグは、3月にeスポーツ大会「明治安田生命eJ.LEAGUE」を初開催。日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメントも、プロ野球史上初となるeスポーツリーグ「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」を開催することを発表した。12球団のeスポーツ選手が、コナミの野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」シリーズで戦い、「日本シリーズ」で優勝者を決めるという。

これらの企業は、eスポーツに参入することで既存事業の認知やファンの拡大を図る他、大会運営による興行収入や放映権料収入を見込んでいるようだ。

 一方で、こうした急な盛り上がりに戸惑う声もある。8月に開催されたeスポーツに関するトークイベントでは、eスポーツの現場で活躍するプロ選手や大会運営者らが登壇。「eスポーツに参入したい大企業の相談が増えた。しかし、みんな自分の所で(eスポーツ事業を)やりたいと思っているので、どこに落ち着くのだろうかと思う」「最近はメディアの取材も増え、海外に追い付こう、eスポーツを盛り上げようとしているのは分かるが、プレイヤー的には置いていかれている感じがする」など戸惑いの声が見られた。

 日本のゲーム文化は、家庭用ゲームやゲームセンターを中心に根付いてきた面が大きい。オンラインゲームや動画視聴の市場の伸びしろはあるだろうが、eスポーツを興行や文化として根付かせていくには既存のプレイヤーやゲームコミュニティーとの協力も必要になってくるだろう。

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