「Hnefatafl(ネファタフル)」は、
9世紀〜11世紀にかけて西ヨーロッパ沿海部を侵略したヴァイキングが日常的に遊んでいたというボードゲームです。
かつてはヨーロッパ全土で遊ばれていましたが、やがてゲームそのものが忘れ去られてしまい、伝説上の存在となっていました。
近年の研究では、ネファタフルはヴァイキングにとって娯楽であっただけではなく、
文化的・宗教的にも重要な存在だったのではと考えられています。

The Board Game at the Heart of Viking Culture | Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/what-is-hnefatafl-viking-board-game

ネファタフルは紀元前5世紀頃にスカンジナビアで生まれ、
ヴァイキングの侵略や公益に伴ってヨーロッパ全体へ広く普及しました。
11世紀初頭のヴァイキングを描いた幸村誠の漫画「ヴィンランド・サガ」にもネファタフルが登場しています。

ネファタフルは、チェスや将棋のように互いのプレイヤーの駒配置が対称ではなく、
王を抱える「中央側」と中央に攻め入る「周辺側」に分かれて対戦する非対称型のゲームです。
中央側は王を盤の四隅から脱出させられれば勝利、周辺側ははさみ将棋の要領で王を捕獲すれば勝利となります。
ネファタフルは地域によってボードの大きさやルールに違いがあり、バリエーションもさまざまだったと考えられています。
文献によると、ネファタフルはウェールズ地方では16世紀、ラップランドでは18世紀までプレイされていたようですが、
16世紀頃から急激に普及したチェスの人気に押され、やがて人びとの記憶から忘れ去られてしまいます。

19世紀に入ると、中世アイスランドの文献を参考にしながら北欧神話の研究が盛んに行われるようになりました。
中世アイスランドの文献には「Tafl」という言葉がしばしば登場していたのですが、
「Tafl」が「板」や「机」を指し示すゲルマン語派の言葉と解釈され、チェスを暗に示した言葉だと長い間考えられていました。
この誤解は北欧神話の翻訳にも大きな影響を与えていて、
当時出版された北欧神話の本には英雄たちがチェスを使って戦略を練っている様子が描かれていました。
チェスの起源は紀元前の古代インドにあるといわれていため、
北欧神話に登場していても不思議はないと考えられていたことも「Tafl=チェス」という誤解が続いた理由の1つといえます。

しかし20世紀に入り、Taflのルールが判明するにつれて、Taflがチェスと全く違うボードゲームである可能性が浮上しました。
さらに、1913年にチェスの歴史を研究していた歴史学者のH・J・R・マレー氏が
「Tablut」というゲームに関する記述を昔のゲーム作家のメモから発見しました。
以下の画像はマレー氏がメモから発見したTablutのボードのスケッチですが、ネファタフルによく似たデザインになっています。
このメモから、マレー氏は「北欧神話にたびたび登場したTaflのルールと比較すると、
TablutはこのTaflとほぼ同じゲームである可能性が高い」という仮説を唱えました。
マレー氏が仮説を発表したのを皮切りに、ウェールズ・アイルランド・イングランド・北ドイツで
ネファタフル系のゲームの記録が発見されました。

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https://pbs.twimg.com/media/B0xvqd_CAAAuBMl.jpg
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Hnefatafl
http://www.lutanho.net/play/hnefatafl.html
https://i.gzn.jp/img/2018/06/30/hnefatafl-viking-history/snap0285.png

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180630-hnefatafl-viking-history/
続く)