【ss書いた】ようせいさんの、いぶんかこうりゅう [無断転載禁止]©2ch.net
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
人類がゆるやかな衰退を迎えてはや数世紀。すでに地球は“妖精さん”のものだったりします。
そして、わたしはそんな妖精さんと人との間を取り持つ調停官という仕事をしています。
そんなわけで、いつも妖精さんとゆかいな事件に巻き込まれ、大変な苦労をしているのです… 気が付いたら里に戻ってきていました。時間を確認すると、過去に飛ばされた時間の2〜3時間後くらいの時に戻ってきたそうです。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛おわったああああああ」
友人Yの叫び声が聞こえます。近くで助手さんも倒れています。どうやらわたしがいない間に本探しを終わらせてくれたようです。ありがとう友人Y。ありがとう助手さん。わたしはいまさっきまでお茶飲んでおしゃべりしてたけど。 「てめぇえさっきまでどこ行ってたんだよ〜急にいなくなりやがってええええ」
ぼやく友人Y。助手さんも騒ぎ立てたりしませんが目で訴えてきます。
「すみません、ちょっと妖精さん関連のトラブルに巻き込まれていまして。」
「うううううう…」 もう反論してくる元気もないようです。申し訳ないですけど妖精さんのせいだから仕方がないですね。あと、手にはタイムスリップに使われた本が手に握られていました。どうやら繰り替えし使えるようです。また行こうかな。 さすがにこの二人に何もしないのもかわいそうなので、お茶を入れて作り置きのお菓子を出します。
お菓子を出すとわらわらと妖精さんが集まってくるので多めに出しておきましょう。すると早速集まってきました。
いつもの光景です。しかし、その中で浮いている妖精さんが一人いました。 シャンパンゴールドの髪、服装は見覚えのある学生の制服、そして、なんかビリビリしています。
嫌な予感しかしません。すぐにタイムスリップにかかわった妖精さんを招集します。 「こっ、これはどういうことですか!?」
「ようせいさんぽかったから」「まちがえて」「つれてきちゃった?」
「連れてきちゃっただけならまだ分かりますけど、なんで妖精化してるんですか!」
「なんか」「いしきのもんだい?」「しゃかいてきたちば?」
「つまりどういうことです?」
「おもいこみはげしかったらしいです」 ということは、御坂さんがあまりにも妖精さんぽかった故に、妖精さんが御坂さんのことを妖精さんだと認識してしまった。そしたらほんとに妖精さんになってしまったと。
少なくともマズイことが起こったことには変わりありません。 「御坂さん、あなた、自分のことどれだけ覚えてますか?」
「みさかさんとはだれゆえ?」
だめだこりゃ、事態は思いのほか深刻です。妖精さんは記憶力はあまりよろしくないのですが、ここまでのものだったとは。
「いっしょにびりびりするです?」
「しません。」 これはすぐさま先ほどの時代に戻らなくてはならないようです。
御坂さん(妖精)とタイムスリップに関わった妖精さんをケースにしまい、また本を開きます。 (とりあえず今日はここまで。続きはまた明日にでも) >>46
(すまん気づかなかった。次から気をつける) -------------------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------
-----------------------------------
--------------------
-------------
------
さっきの時代に戻ってきました。場所は学園都市内の公園と思われる場所。
空を泳ぐ飛行船の電光掲示板に表示されている日時を確認すると彼女らと別れて数時間後だとわかりました。
もう日が落ちて薄暗くなってきています。こうなると夜を過ごす方法も考えなくてはいけません。
「とりあえず来てみたものの、何をすべきなのか全くわかりませんねぇ。御坂さん、これからどうするべきかわかりませんか?」
「う〜ん。なんかあっちのほうにいったらいい かも?」
やっぱり曖昧ですね…。しかし他にできることもないのであっちのほうに進んでみます。
公園の内部は緑が多く、夕暮れの涼しい風が頬をかすめ、心が浄化されるような感覚を覚えます。絶好の散歩日和です。
いくらか歩いた時、向こうのほうから子供が走ってくるのが見えました。親の元へ早く帰りたいのでしょうか。のどかな光景です。
即座にその場に伏せて何とかやり過ごそうとします。
あの子は後ろの人から逃げているようでしたが怖がっているようではなく、むしろ鬼ごっこを楽しんでいるようでした。大丈夫でしょうかあの子。
「やっぱりあなたみたいなドジはこの私には追いつけないんだよ!ってミサカはミサカはケンカを吹っかけて…」
ズザアアァァッ
すごい速さで、すっころびましたね。ドジとは誰のことでしょうか。
「はぁやれやれ、とミサカはあきれた気持ちをあからさまに口にします。」
そう言いながら近づいてきたのは―御坂さんでした。一体どういうことでしょう。よく見るとずっこけた子も御坂さんを幼くしたように見えます。 「上位個体が迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。とミサカは形だけの謝罪をします。」
幼い御坂さんを抱えながら彼女は言いました。
まぁ一番迷惑だったのは銃をぶっ放してたあなたなんですけどね…。あと心の声ダダ漏れですよ。 「あの、あなたは御坂さんの双子の妹さんでよろしいですか?」
「正確には違います。私はお姉さまの遺伝子情報から作られた体細胞クローンである。と、御坂は返答します。」
「人間のクローンの製造は国際法で禁止されているはずですが?」
「学園都市上層部の判断により実験のため極秘で製造されました。なお、実験は今現在、完全に中止されています。と、ミサカは補足します。」
極秘の情報を見ず知らずのわたしにベラベラ喋っていいんですかね…。とわたしは素朴な疑問を浮かばせます。
「実験とはどのような内容だったのですか?」
「御坂美琴のクローン、通称シスターズを2万人殺害することによりレベル6の能力者を開発するものです。と、ミサカは簡潔に伝えます。」
とんでもない内容です。どうやらこの学園都市の闇は深いようです。
「中止された理由は?」
「お姉さまとお姉さまの友人である上条当麻が実験に介入し、実験が破たんしたためです。と、御坂は返答します。」
きっと御坂さんは自分のクローンが実験に使われるのが辛くてたまらなかったのでしょう。
こんな危険な実験をするような相手に抵抗するとは、もしかしたら命の危険もあったはずです。それでも助けようとしたのは、彼女の優しさがそれを突き動かしたのでしょう。
それにしても、一緒に助けようとした友人の上条さんとやらも凄いです。
「あと、わたし今私困っていまして、どこか行くあてって知ってますか?」
「それならこの道を直進し、312メートル進んだ後左折し、150メートル進んだ所にジャッジメントの支部があります。と、ミカサは正確に経路を伝えます。」
「ありがとうございます。」
「それでは失礼します。とミサカは別れの挨拶をします。」
御坂妹さんは幼い御坂さんを抱えて行ってしまいました。
「さようならーって、ミサカはミサカはさよならを言ってみるー!」
「さようなら〜」
気が付くともうあたりは暗くなり、街灯の明かりは先ほどよりずっと濃くなっていました。
すぐジャッジメントの支部とやらに向かいます。
「失礼します…」
ジャッジメント支部の扉を開くと、そこには花飾りの初春さんとツインテールの白井さんがいました。
「あら昼の…っておおおおお姉さま!?どうしてこんなお姿に…」
白井さんは昼には妖精さんが見えていなかったはずですが。もしかしたら御坂さんだけに限定して見えるのかもしれません。不思議なものです。
「えっ、白井さん御坂さん見つけたんですか?私には見えませんが…」
「いや!初春!この方の手のひらの上にのってましてよ!」
「う〜ん私にはさっぱりですねぇ。」
「どれどれ〜?」
「あっ、固法先輩。先輩も見えませんよねぇ」
「そうねぇ私にもさっぱりだわ。白井さん御坂さんに会いたすぎて幻覚でも見てるんじゃないかしら?なんてね。」
「大丈夫ですよ。御坂さんは確かにここにいます。ただ、こんな姿になってしまっているだけです。」
「そんな…し、しかしこれはお姉さまのあんなものやこんなものをあんなことするチャンスですわ!グヘヘ」
もしかして、白井さんって巻き毛と同類なんでしょうか?
「でもとにかく、詳しくお話を伺う必要がありそうですね。」
入ってすぐの所にある椅子に案内されます。すると初春さんがコーヒーを淹れてきてくれました。
あと、どうやらジャッジメントとは学生による風紀委員で、学園都市内の治安維持に努めているらしいです。
「それで、まずはあなたについてお話を伺ってもよろしいですか?」
「はい。」
やましいことは何もしていないのになにやら尋問されているような感じがします。
「あなたについてバンクで検索をかけたのですがヒットしないようなので、学園都市の学生や住人ではないそうですね。具体的にどこから来たのか教えていただけないですか?」
まさか未来からやってきましたとは言えません。
「すみません実は記憶を無くしていて…、今日の昼ごろからの記憶しかないんです。」
「そうなんですか!?私たちとお茶したときは何ともなさそうでしたけど…」
「すみません記憶をなくした恐怖のあまりなかなか切り出せなくて…」
「やはり保護の必要が出てきますわね。これだと外にいても行くあても無いでしょうし、今晩はここに泊まっていただくのが思いますわ。あと、万が一の事態に備えて今晩私はこの方と泊まることにしますわ。初春は必要手続をとってくださいまし。」
「了解です。」
昼間お茶したときとは別人みたいにしっかりしています。これが学園都市による教育の賜物なのでしょう。
「手続き取れました。それでは私は失礼しますね。」
「それじゃ私も失礼するわ。白井さん、あとはよろしく頼むわね。」
「二人ともさようなら。また明日ですの。」
二人を見送った後、倉庫から非常用の食糧を出してくれました。麺をお湯で戻すタイプのもので、わたしの時代ではめったに食べられないものでした。
出来上がったヌードルをすすります。
「お姉さまもいかが?」
「おかしいがいはたべぬゆえ」
「どうしてですの?」
「どうもこうも、こういうものだから?」
「何かしゃべり方もおかしくなってますわね。」
「妖精さん化していますから。元の御坂さんとは別物と考えたほうがよさそうですよ。もしかしたらあなたのことも忘れてるかも…。」
「そんな…。そんなことはありませんわ!実は私をちょっと驚かすために演技してるだけですわ!そうですわよね?」
「う〜ん」
「あなたは愛しの御坂美琴お姉さまで、私はお姉さまの露払い。そうですわよね?」
「う〜ん。あなたのことよくおもいだせないです?」
「えっ…」
彼女の中で、何かが崩れるような音が聞こえました。 -------------------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------
-----------------------------------
--------------------
-------------
------ 白井さんと私は寝袋にくるまっていました。何かとサバイバルな経験をしている私にとって、寝袋も結構慣れたものです。
妖精さんはというと、わたしたちの頭上あたりに小さな妖精さんサイズの布団に川の字のように入っていました。
「お姉さま…。どうしてこんなことに…。」
お茶してる時や夕食を食べているときに聞いた話から考えると、変態な部分はありつつも白井さんは御坂さんのことを相当慕っているのでしょう。ほかの妖精さんは見えないのに御坂さんだけ見えるのはこのためかもしれません。
当然、妖精さん化してる御坂さんは友人のことを覚えてるはずもなく、それを知った時のショックは相当大きいものだったに違いありません。考えるだけで胸が痛くなります。
「私は、一体お姉さまの何だったのでしょうか…」
かなり追い詰められているようです。しかしこういう時、他人が彼女にできることなどありません。そっとしてあげるのが一番なのです。
さて、明日はどうしましょう。肝心の御坂さんをもとに戻す方法はまだ手がかりすらつかめていません。白井さんのためにも御坂さんを元にもどしてあげなければ。
いろいろなことを思いふけっているうちに、わたしはいつの間にか寝ていました。 -------------------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------
-----------------------------------
--------------------
-------------
------
どうやら朝になったみたい。
私は昨日から不思議な夢を見ているようだった。気が付いたら異世界にいたと思ったら私の体は縮んでいて、10cmほどになっていた。
そして、昨日カフェでお茶をした不思議な女性が連れてきていた不思議な生き物、“妖精さん”が目の前にいた。体長10pの世界からみた妖精さんは昼に見た時よりもずっと知的に見えた。
「妖精さーん。みんな起きましたか〜。」
あの不思議な女性が呼びかけてきた。
「はーい」「あたますっきり」「しゃちくにはめずらしくしっかりねれたです?」
周りの妖精さんたちが彼女の呼び掛けに答えていく。
「きもちよかったです」
どうやっても口に出す言葉は幼稚になってしまう。これも昨日と同じ。考えてることや少し前の記憶を口に出そうとすると意識とは全く関係ない言葉が出てしまう。 「はあ、もう朝ですの?」
そうだ、昨日の夜に黒子に話しかけられたけどうまく喋れなくて誤解させちゃったんだっけ。ごめんね黒子。今度こそは忘れてないってちゃんと伝えるんだから。
「あ、やっぱり悪い夢ではなかったんですのね。寝て起きてれば覚めると思ったのですが。」
「わるいゆめとは?」
「何でもないですの…何でも…」
ああ、また黒子を悲しませてしまった…。私の方だって、悪い夢を見ているほうがずっとよかったのに。
(私、一生このままなのかな…)
(そんな悲観的になっちゃだめよ。)
すぐそばの妖精さんが返事をしてくれた。どうやら妖精さん同士なら声を発しなくても会話できるようだ。でも気分によって声を出して会話することもあるらしい。
(そうだよ!まだもとに戻れないって決まったわけじゃないし!)
(ポジティブにいきましょうよ。そうすれば道は切り開けるかもしれないわ!)
でも元凶はあなたたちじゃなかったっけ…。まあ、いいや。もう過去のことをグダグダ考えるのはやめよう。そうポジティブ!ポジティブにいくのよ!
「そういえば、御坂さんが妖精化してしまったのって思い込みが原因なんですよね?」
またあの女性が話しかけてきた。
「さよう」「そうですな」
「う〜ん。思い込みを解く方法か…」
思い込み。そう、私は妖精さんのまぼろしのようなものでこうなってしまった訳だけれども、何かの言葉が喉の奥に引っかかっているような…
まぼろし…?幻想?
そうだ幻想殺しだ!あいつの右手になら何とかできるかも。一刻も早く伝えないと。
「にんげんさん、にんげんさん?」
「なんですか?」
「いまじん、ぶれーくして」
「何やら意味ありげな言葉ですね。覚えておきますよ。」
やった!伝えられた情報は必要最低限だったけど、これなら何とかあいつにたどり着けるかも。
(やったね!)
(事件解決に一歩前進したね!)
(すごいすごい!)
ほんのちょっと、立ち直れてきた気がした。
いまじんをぶれーくする。なにやら意味ありげですが、さっぱりわかりません。いまじん、幻想か何かの類をブレークすればいいということなのででしょうが、それができたら苦労しません。
「白井さん。イマジンをブレークって聞いて、何か思い当たるようなことありますか?」
「すみませんが、私にはさっぱりですの。」
やはりそうですか。この単語を聞いてすぐ事件解決の手がかりを掴めるのは、見た目は子供のあいつくらいしかいないでしょう。
重要な手がかりには違いないですが、この手がかりを解くための手がかりが必要みたいですね。あぁ、なんかもう早速こんがらがってきました。
「とりあえず聞き込み調査から始めますかねぇ…。」
すると突然、風を切る音とともに両手首に冷たい感触が伝わってきます。彼女の能力“テレポート”によって私の華奢な手首に手錠がかけられたのです。
「白井さん!こっ、これどういうことですか!?」
「ただいまアンチスキル緊急の連絡が来ましたの。昨夜からお姉さまが行方不明だという件であなたが重要参考人に指定され、見つけ次第拘束しろとのことですの。」
「私なんて拘束しても意味ないと思います。」
「そりゃ、お姉さまが行方不明になった日と同日に正体不明の人物が発見され、しかも行方不明になる直前にあなたはお姉さまと接触していたのですから、意味は大有りですわ。」
「そっ、そんな…」
「アンチスキルはこの事態を結構重く見てるそうですの。学園都市の検問はネズミ一匹入れないほど厳重ですから、もし学園都市外部からの侵入者なら相当危険な人物だという見立てですわ。」
「はぁ」
「まぁあなたのことを見てる限り危険な人物とは思えませんけど、念のためですの。拘置所に護送しろという指示が出次第移動しますので、それまでちょっと辛抱してくださいまし。」
こうしてわたしは見知らぬ街、見知らぬ時代で、犯罪者の一歩手前まできてしまったのです。冤罪ですけど。 -------------------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------
-----------------------------------
--------------------
-------------
------ アンチスキルの拘置所までは彼女がテレポートを使って護送したのですぐでした。ただテレポート酔いしました。気持ち悪いです。なんともない彼女が不思議に思えてきます。
拘置所の中には武装し、デカい銃を抱えた人が何人もいました。白井さんの話の通り、相手はこの事態をかなり重く見ているようで、それは私にとっても同じでした。
「ジャッジメント177支部の白井黒子ですの。ただいま昨日の事件の重要参考人を護送しました。」
「おう、ご苦労さんじゃん。そこんとこの部屋に入れといてくれ。そしたら支部に戻って次の連絡を待つように。」
「了解ですの。」
すると目の前の牢屋にテレポートされました。
牢屋には監視カメラとブラインドのないトイレしかなく、部屋の隅にはいかにも厳重そうなドアが設置されていました。とても狭っ苦しくて精神的に追い込まれそうです。
「トイレくらい隠してもらってもいいじゃないですか…デリカシーないなぁ」
「あ、言っとくけどアンタの会話と様子はすべてモニター&録音済みじゃん。あんまり恥ずかしいこと言ったりぼやいたりするもんじゃないじゃん。」
どこに設置されているのかよく分からないスピーカーから音声が流れてきました。
うう、憂鬱になってきます。
「んじゃ、早速尋問を始めるじゃん。あんたの出身地は?」
「記憶を無くしているのでわかりません。」
「なるほど。白井の話通りだな。」
「それなので私から話せることはなにもありませんよー」
「そうかそうか。まぁ学園都市の技術をもってすれば人の記憶なんて覗き放題だから、後でいい機械を手配してやろうじゃん。」
げ、ハッタリかもしれませんが本当だったら困ります。
「んじゃ、続きは午後からじゃん。それまでせいぜい化けの皮を剥がされないための作戦でも立てているといいじゃん。」
ブツッという音とともに、この部屋に静寂が訪れます。私の息遣いと心臓の音が体の中で響きます。
さて、作戦を立てないとマズいようですね。しかし、化けの皮を剥がされないためでなく、この部屋から脱出するための方です。
幸い私には妖精さんという最終兵器があります。ここに護送される前にケースに移動させていたのです。彼らはほかの人には見えないので今回に関してはとてもべんり。
「妖精さん、ここから脱出するための便利グッズありませんか?」 -------------------------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------
-----------------------------------
--------------------
-------------
------
(ここから脱出するための道具かぁ…)
(壁に輪っかをつけるとそこを通り抜けられる、っていうのはどうかしら?)
(いっそのことテレポートしちゃう?)
(それだと11次元に変換しないといけないからな面倒くさいなー)
あの不思議な人からの頼みを受け、妖精さんたちはこの部屋から脱出する方法を考えていた。妖精さん同士のディスカッションはどんどんスピードアップし、どんどん難解なものになっていく。
もう何のこと話してるのかわけわからないわね…
(そういえば)
妖精さんの一人が話しかけてきた。唐突だったのでちょっとびっくり。
(ん?どうしたの?)
(電気生み出せたよね?)
(うん。できるけど。)
(今ちょっと行き詰っててさ、2億ボルトほど供給できれば脱出するための道具使えるんだけど…)
(金属の球をレールにセットして、電流を流してローレンツ力を使って射出する道具を作ったんだ。壁もろとも吹っ飛ばそうってわけ。派手な方が楽しいしね!)
(あの、それなら私できるけど…)
(え?そうなの?)(せっかくならお願いしちゃおう)(みたいみたい!)
(せっかく考えてもらったのに水差しちゃってごめんね。)
(いいのいいの!)
妖精さんはとてもやさしい。
結果的に妖精さんが作り出した道具はこの虫眼鏡のような代物。どうやら物の透視ができるらしく、これでレールガンを撃つ時、壁の向こうに人がいないかを確認できるらしい。 「にんげんさんこれをおさしあげ」
「一体なんですか?これ。」
「これでかべのむこうみれるです」
「なるほど。どれどれ見てみましょう。どうやら壁の向こうやその周りには誰もいないようですね。」
「そっかーそりゃよかったー」
「でも見るだけだとここから脱出できませんよ?」
「これはあんぜんかくにんー」
「何やら危険なにおいがしますけど大丈夫ですか?」
「たぶんだいじょーぶー」
「あとこれもおさしあげー」
「帽子ですか?とりあえずかぶっておきましょう。」 (よし、はじめて!)
(オッケー!)
久々に腕が鳴るわ。飛び切りの一撃を打ってやる。
渡された妖精さんお手製のコインを蹴り上げる。宙を舞うコインはいつもよりゆったりと動いていたように感じた。
今だっ!
コインを思いっきり殴り、最大出力の電撃をコインに浴びせると、コインは瞬く間に射出された。今日は調子が良いようで、今までで一番の威力だったかも。
あの女性はぽかんとした顔でそこに突っ立っていた。面白い顔。
「確かに脱出できますけど…。かえって事態悪化してません?」
「ちょっとがんばりすぎちゃった?」
「ちょっとどころじゃないですよこれ…」
一刻も早く逃げる必要がありました。
美坂さんの力のおかげで部屋のドアどころか壁が丸ごと吹っ飛び、部屋にはぽっかり大きな穴ができてしまいました。
普通の人はおろか、開発を受けた能力者でもなかなかこんなことできる人はいないようで、わたしは見事にヤバイ奴認定を受け、あの銃を抱えた怖い人たちに追い掛け回されているのです。
「銃は発砲許可が出るまで発砲するんじゃないぞ!」
「相手はレベル4はくだらない能力者だ!注意しろ!」
こんなか弱い女子を相手に追い掛け回すなんてなんてはしたないんでしょう(すっとぼけ)
「妖精さん!何とかしてくださいよ!」
「なんとかなってますが?」
「はいいい!?全然何とかなってないでしょ!」
「なってますぞー」
妖精さんはのんきなものです。流石、喜怒哀楽から怒と哀を抜いた性格だけあります。
後ろからだんだん足音や怒声が迫ってきます。しかし、あてずっぽに走るしかありません。ひたすら走り、十字路を直感を頼りに曲がります。
もう何も考えていず、ただ必死でした。そこ先に待っている未来が残念なものだというのには気づいていましたが、恐怖という感情に支配されていた私にとって、ただ走り、逃げることしかできませんでした。
丁字路を右に曲がると、向こうから敵が迫ってくるの光景が目に飛び込んできました。ついに残念な未来にたどり着いてしまったようです。万事休す。
私はあきらめ、その場に座り込みます。もう私のことは煮るなり焼くなり好きにすればいいのです。 何をぼーっとしてるんです?さっさと目の前にいる私を捕まえればいいのに。
「おい、対象を見なかったか?」
「あれ、たしか追いかけていたはずなのだが…」
「おい、対象を追いかけていたのはこっちの隊だぞ。お前らまさか見間違えたのか?」
「それはこっちのセリフだぞ。お前はいっつも変なミスするからな。どうせお前が見間違えたんだろ!」
「何だと!お前だってこの間くだらないミスして隊長に怒られていたじゃないか。お前の、その人のことばかり棚に上げて話すような奴には腹が立つね。」
「なにを!」
「やんのかコラァ!」
『お前ら喧嘩してる場合じゃないじゃん。いっつも無線でお前らのしょーもない喧嘩聞かされてるこっちの身にもなってみろじゃん。』
「はっ。隊長殿、これは申し訳ありませんでした。」
「今後は反省し、肝に銘じます。」
『まったくお前らはいっつもそうじゃん…。まあそんなことはいいからさっさと別の場所を捜索してくれじゃん。』
「「了解しました。」」
仲悪い割にはやけに息がぴったりでしたねぇ…。
と、そんなことはともかく行ってしまいました。どういうことでしょうか。あ、そういえばわたし帽子をかぶってたのでした。
「妖精さん、もしかしてこれのことですか?」
「そーそー」
「存在があやふやにみえるです?」
「なるほどそういうことだったんですか。それじゃ早くここから脱出しましょう。」
拘置所を出ました。そこには今までと同じ平和な日常が広がっていました。今さっきまで銃を持った人たちに追いかけられていたとは思えません。
もうかなりの達成感があります。しかし、実際のところはふりだしに戻っただけで、具体的にどうすればいいのかは全く見当がついていません。
わかっているヒントはイマジンをブレークすることのみ。しかも拘置所から脱走したとなればわたしは指名手配でもされてるでしょう。そうなるとできることは限られてきます。
とりあえず町をうろついてみることにします。っていうかこれくらいしかできることもないのですが。
町は活気にあふれていました。町は騒がしく、様々な人が歩いていました。
黒服の人が誰かと電話をしながら歩いています。
学生さんと思しき人が友人たちとおしゃべりしています。
音楽を聴きながら、自分の世界に浸っている人もいます。
とにかくいろんな人がいました。
そして、その人の数の人生があり、その人たちによって命は受け継がれ、わたしたちの世代へと引き継がれていくのでしょう。
おもむろに公園に入ってみます。
わたしの時代ではあまり見かけない子供たちが広場でたくさん遊んでいました。とても和やかな空気の場所です。しかし、そんな空気の中で浮いている人がいました。
全身を白い服で包んだシスターのような人が倒れています。大丈夫でしょうか?
おそらく指名手配される身ですから人に話しかけるのもリスクが伴います。しかし、思い切って声をかけることにしました。
「大丈夫ですか?」
「とうまのまずい。」
「へ?」
「とうまの作ったお菓子がまずいんだよ!」
どうやらこのシスターさんは同居人の人の作ったお菓子がまずいことに腹を立て、その勢いのあまり家を飛び出してしまった。で、おなかが減りすぎて行き倒れてしまったと。
「ほんとうにまずかったんだよ!」
「そこまで非難しなくてもいいんじゃないですか?」
「確かに普段ごはん作ってくれたりしてるし、感謝してるけど、それにしてもひどすぎたんだよ!」
結構食に対して厳しいようですこの子。
「具台的にはどのようにひどかったんです?」
「クッキー作ってくれたんだけど、なんかぼそぼそしてるし、生っぽかったし、全然香ばしくなかったんだよ。」
「それだと、焼いた時の過程に問題がありそうですね…温度の加減がうまくいかなかったんでしょう。」
「そうなの!?もしかしてお菓子づくり詳しい人!?」
「いや、そういう訳では…」
「ねぇ、一緒に来てお菓子作り手伝ってくれないかな?」
「すみませんわたし実は時間がなくて…」
「………だめかな?」
やめて、そんな小動物みたいなまなざしで見ないで。断れないじゃないですか。
で、シスターさんととうまさんの家に到着。学園都市の学生は親元を離れ、学生寮などに住んでいるそうです。
「遠慮しないで入っていいんだよ。」
「おじゃまします。」
「おおインデックス帰ってきたか!」
そこにいたのは昨日のツンツン頭の少年でした。そういえばシスターさんは「とうま」と呼んでいましたが、もしかしてこの人が御坂さんを助けた上条当麻さんなのでしょうか。命がけで御坂さんを救ったと思われますが、ぱっと見そういう風には見えません。
「ああ昨日はどうも。って、インデックス何で連れてきたんだ?」
「あまりにもとうまの作るお菓子がひどいから、お菓子作りの天才を呼んできたんだよ!」
勝手にハードルを上げないでほしいですね。 「作ったクッキーありますか?」
「ああ今出します。」
彼の作ったクッキーを試食してみます。確かに生焼けな感じがしました。
「焼いた時の温度に問題がありそうですね。一緒に作ってみますか?」
こうしてお菓子作り教室が始まりました。
「まずバターは常温に戻してボウルの中に入れ、クリーム状になるまで混ぜてください。その後、砂糖と卵黄を入れ、よくなじませてください。」
「おうよ!」
彼は手際よく作業していきます。普段自炊しているだけのことはあるようです。
「次はどうすればいいんだ?」
「薄力粉200gを入れてください。キッチリ測って入れてくださいね。そしたらのってりするまでこねてください。」
「あとは型を取ってオーブンで焼くだけですね。オーブンの温度は170℃。13分から17分ほど焼いてください。」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています