>>88
(続き)

経済対策に一貫したビジョンが見えないのも気がかりです。海外を見ると、休業した
労働者への補償を重視する欧米型、休業するしないにかかわらず国民一人ひとりに
お金を配ることを目玉とする米国型があります。大規模な財政出動を伴う米国型は、
既に大きな借金を抱える日本にはリスクもあります。私は、休業中の人件費や家賃の
補償を重視すべきだと考えますが、結局、国民1人あたり10万円の現金給付と
なりました。

迷走した政権・与党の責任もありますが、海外の経済政策との比較をしきりに報じる
メディアの影響や、みんなが一律に同じ条件であることを「平等」と考える国民性も
影響したのかもしれません。

批判すべき点はありますが、政府と国民の互いの期待の高さが浮き彫りになったことは
指摘すべきです。

政府は、欧米のように罰を科したりしなくても、国民が自主的に自粛をしてくれると
期待しています。一方の国民も、政府への不満の裏には「お上が何とかしてくれる」
という強い期待があるのかもしれません。これは「政府にはそもそも期待しない」
という米国の伝統的な価値観とかなり異なります。

相互の期待の高さを信頼に結びつけていけないか――。これがコロナ後を見据えた
課題ではないでしょうか。

(続く)