>>188
(続き)

この二つの法解釈変更は、単なる違憲や違法の法運用ではない。政治権力を法で
拘束する立憲主義それ自体を骨抜きにする、違憲や違法の法運用なのである。

しかも、それだけではない。

一方で内閣法制局の人事慣行を破って、長官の首を集団的自衛権行使容認論者に
すげ替えた。他方で「一強」となった首相が法務大臣の、事実上首相の息のかかった
内閣人事局が法務省幹部職員の、それぞれ首根っこをつかんだ。それにより、
内閣法制局と法務省が長年とってきた立場とは矛盾する前記の法解釈変更をそれぞれの
機関に迫り、おのおのの「国の法をつかさどる機関の責任者」が、唯々諾々とこれに
従ったのである。

法の秩序は、ほとんど破壊されたといっても言い過ぎではない。

この消息を、政権中枢とその「配下」の者たちとの関係という観点から考察しよう。

法の制定と法の適用は、異なる機関に振り分けるのが、権力分立の根本である。
安定的に行われてきた法の解釈は、法それ自体とほぼ同視されるから、その解釈を
変えるのであれば、法改正によるのが本道である。これを解釈変更のみで代替するのは、
法の適用者が法の制定権を行使するに等しい。

(続く)