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(続き) (憲法学者 蟻川恒正   その国の7年半)

脱法厭わぬ権力中枢 従う「配下」も共犯 法秩序ほとんど破壊

この7年半近くの日本の政権を振り返ってみよう。

2014年7月、歴代の内閣法制局答弁により憲法9条違反であることが確立した
政府解釈となっていた集団的自衛権の行使を、同条改正に言及することなく、
閣議決定のみで合憲へと解釈変更した。20年1月、検察庁法22条の下で検察官には
国家公務員法の定年延長規定は適用されないとする39年間疑われなかった政府解釈を、
新たな政府見解を発しただけで変更し、一人の検察官の定年延長を強行した。
「法ができないと言っていることを、法を変えもしないでできることに」したのである。

集団的自衛権の行使を容認した現政権の閣議決定は、何が問題か。自衛隊の武力行使を
求める国際社会の一部からの圧力を押し返す憲法9条の力を弱めた。その通りである。
だが、より問題なのは、憲法ができないとしていることを一内閣でできるとしたことに
より、憲法改正規定(憲法96条)を裏から侵犯したことである。

閣議決定による検察官の定年延長は、何が問題か。内閣総理大臣をも訴追しうる権限を
持つのが検察官である。検察官の定年規制を政府見解のみで反故にすることを許せば、
政権の言うことを聞く検察官は定年を延長し、聞かない検察官は延長しないとする
ことができる。政権の存亡にかかわる刑事事件が、その政権の手に落ちる。

(続く)