産経抄 2月11日

 韓国には、「建国記念日」がいくつもある。まず日本統治から解放された1945年8月15日を記念した光復節は、祝日となっている。「光復」は主権を取り戻すという意味だ。

 ▼保守派は3年後の8月15日を李承晩・初代大統領の下で始まる、大韓民国のスタートとして重んじてきた。もっとも北朝鮮に融和姿勢をとる文在寅大統領は、日本統治時代の1919年3月1日に起きた抗日独立運動を建国の起点にする考えを示す。

 ▼これに対して、10月3日の開天節は、国民が政治的立場を離れて朝鮮民族の出発点として祝う日である。天神の子である桓雄(ファンウン)と熊から変じた美女との間に男児が生まれる。檀君(タングン)と名付けられ「朝鮮」の始祖となる、神話がもとになっている。

 ▼本日、令和の時代になって初めての建国記念の日を迎えた。初代神武天皇が即位された日に基づいている。日本書紀は、即位の日を「辛酉(かのととり)年正月朔日(ついたち)」としている。明治のはじめ、太陽暦に換算した2月11日を紀元節として祝日の設置が決まった。

 ▼敗戦後、神道を敵視する米軍は廃止を命じた。主権を回復してからもその復活をめぐって激しい論争が繰り広げられた。昭和42年にようやく国民の祝日として復活する。当時、「反対運動に反対する」論陣を張ったのが、劇作家の福田恆存(つねあり)である。

 ▼ただし、「私が望んだのは、『建国記念の日』などといふ『休日』ではなく、紀元節といふ『祝日』なのであ」った(『ずばり一言』)。
確かに、現在の名称では、2月11日の由来も、建国の紀元を定めた古代の日本人の気概も伝わってこない。福田の言う通り、紀元節として国の成り立ちをしのびたい。単なる休日のままでは、諸外国と同様に国民の間に分断が進むばかりである。