2月8日

 「痛恨の極みだ」。安倍晋三首相は6日、拉致被害者の有本恵子さんの母、嘉代子さんの訃報にこう悼んだ。父の晋太郎元外相の秘書官時代から、
嘉代子さんと夫の明弘さんの訴えに耳を傾け拉致問題に取り組んできただけに、真情からの言葉だろう。何とも歯がゆい現状である。
 ▼「明弘、あなたはきっと勝利するでしょう」。昨年6月には、米国のトランプ大統領からこんな直筆の手紙も届いた。嘉代子さんは、安倍首相
とトランプ氏の緊密な連携に「今が解決へ最後のチャンス」と望みを託してきたが、とうとう間に合わなかった。
 ▼当然ながら、有本夫妻はどうしたらまな娘を取り戻せるかを考え続けてきた。抄子が、明弘さんからこんな手紙をもらったことは以前記した。
「憲法改正を実現し、独立国家としての種々さまざまな法制を整えなければ、北朝鮮のような無法国家と対決できません」。
 ▼にもかかわらず、衆参両院の憲法審査会は機能せず、いまだに野党議員は国会質疑でのんきに花見話に興じている。有本夫妻が旧社会党幹部
らに拉致問題について相談しようとしても、門前払いをくらった二十数年前と国会の問題意識の希薄さは変わっていない。
 ▼「じくじたる思いだ」。立憲民主党の枝野幸男代表は6日、嘉代子さんが亡くなったことにこう言及し、政府に注文を付けた。「口だけでは
なく、ちゃんと物事が前に進んでいくよう強く促し求めていく」。もっともらしいが、では枝野氏はこれまでどんな活動をしてきたのか。
 ▼抄子は持病悪化による第1次政権退陣から間もない平成19年12月、安倍首相が衆院議員会館の自室で明弘さんと今後の拉致問題について
真剣に話し合う姿を目撃した。口だけに映るのはどちらだろうか。