産経抄 6月25日

 69年前の今日、朝鮮戦争が勃発した。未明にソ連の支援を受けた10万の北朝鮮軍が38度線を突破し、総攻撃をかけた。日本の世界史の教科書にも記載されている、歴史的事実である。

 ▼もっとも北朝鮮は、韓国が先に仕掛けたとする「北侵」を主張している。6年前、韓国の高校生を対象にした調査では、なんと約7割の生徒がこの戦争を北侵だと回答していた。
当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、親北朝鮮の左翼系学者の影響下にある教育現場の現状を大いに嘆いたものだ。

 ▼今や高校生どころか、大統領の歴史認識さえあやしくなってきた。今月6日、朝鮮戦争で戦死した兵士らを追悼する「顕忠日(ヒョンチュンイル)」で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が行った演説が波紋を広げている。
「韓国軍のルーツ」としてたたえた金元鳳(キム・ウォンボン)なる人物は、なんと北朝鮮の英雄だった。

 ▼抗日運動のリーダーだったところが気に入っているらしい。ただし、金元鳳は北朝鮮の政権樹立に参加し、朝鮮戦争では勲功があったとして、金日成から最高位の勲章まで受けているのだ。
北朝鮮への融和姿勢は今に始まったことではないが、さすがに度が過ぎると世論の反発を招いている。

 ▼こんな大統領の下で、軍の規律が緩むのも当然だろう。今月15日には、北朝鮮の木造船が韓国東部の港に接岸し乗組員が上陸している。お粗末な警戒網で接岸を許した失態を隠そうとしたのか、韓国軍は当初、船を海上で発見したかのように発表していた。

 ▼韓国は外交でも八方ふさがりである。隣国のよしみで、「大丈夫ですか」と声の一つもかけたいところだ。ただ残念ながら、文氏は、28、29日に大阪で開かれるG20首脳会議で来日するものの、安倍晋三首相との会談は、今のところ行われないもようである。