7月31日(水)朝日新聞東京版朝刊文化面・後藤正文の朝からロック

書き直したくなった歌詞

友人たちがシェアした記事を読むうちに興味が湧いて、れいわ新選組から参議院選挙に
立候補した安富歩さんのブログや記事を調べて、いくつか読んだ。
安富さんは、数年前から自身の自然な心の向きに従って、女性の服を着るようになった
そうだ。
街なかで、女性装の自分に向けられる白い目の存在。そうした白眼視が自身の思想に
大きな影響を与えたのだという。
「白い目は、それを向ける人に問題がある」と安富さんは言い切る。
例えば、性自認や性的指向を差別する者は、性自認や性的指向を口実にしているに
過ぎない。存在するのは差別をする人だけなのだと。
しなやかで力強い言葉だった。
同時に胸が痛かった。
自分の楽曲の中で使われている「女々しい」という言葉に違和感を覚えるようになった
のは、ここ数年のことだ。
辞書に書かれた「意気地がない」という意味と、性別には関係がない。
安富さんの考えに触れるうちに、違和感はどんどん膨れ上がり、無性に歌詞を書き直し
たくなった。
10年までにその言葉を選んだことが恥ずかしい。
もちろん、誰かを差別するために書いた言葉ではない。
けれども、差別をする人たちの口実を補完するような言葉だと、今では思う。

(ミュージシャン)