7月31日(水)朝日新聞東京版朝刊オピニオン面・多事奏論

編集委員 国分高史     れいわ旋風  心からの言葉 だから刺さった

選挙の街頭演説を聞いて涙を流す人を見るのは珍しい。参院選投開票日前日の20日夕、
東京郊外の多摩センター駅前であったれいわ新選組の演説でのことだ。

比例区特定枠で立候補した木村英子さんは、生後間もなくの事故が原因で首から下を
自由に動かせなくなった。この日の演説では、養護学校を出てから受けた差別を語り、
議員になったら障害者と健常者が共に学びあえる教育を実現したいと訴えた。

「障害があるというだけで子供を分けていいはずがありません。もう私のような
子供たちを増やしたくないんです」。静かな語り口に、涙ながらに拍手する人がいた。

山本太郎代表が結成したれいわ新選組は、木村さんら重い障害のある2人を当選させた。
消費税廃止などの先鋭的な主張が注目されたが、街頭演説を何度か聞いて驚かされたのは、
山本代表以外のほぼ無名の候補者たちが発する言葉の強さだった。

元コンビニオーナーは、「弱い者が弱い者をいじめる。コンビニはそういう世界。
もういい加減、強い者が人間を部品のように扱うのはやめてくれ」。元派遣労働者の
シングルマザーは、「若者が政治に無関心なんて絶対にウソ。政治が若者を、貧乏人を
排除している。だったら、こっちは手作りの政治をつくるしかない」

れいわの候補者はみな、自分の生活に根ざした「言いたいこと」を持っていた。
それが聴衆の心に刺さった。演説後に何人もが寄付の受付に列をなし、財布から
千円札を取り出した光景がそれを物語る。

(続く)