>>878
(続き)

象徴的だったのは、首相が最終日に、東京・秋葉原で選挙カーの上からマイクを握った
恒例の絶叫だ。強調したのは政治の「安定」で、憲法については野党批判の文脈で
触れた程度だった。9条への自衛隊明記など自民党が掲げる「改憲4項目」には
言及すらない。自ら進めたい政策さえも、強く語りかける熱量は感じられなかった。

そもそも今回、首相は衆院解散の大義を見いだせずに衆参同日選を見送った。
通常国会が閉幕したことを受けた6月26日の記者会見では、こう述べている。

「国民の皆様の理解と支持によって政策は推進力を得る。国民の皆様に問う必要がある
段階においては、解散総選挙を行ったということである」。重要な政治課題に挑む
ときは、衆院の解散で国民に信を問うべきだという理屈だ。

憲法改正は国家のありようも変える大論争となるテーマであり、首相が言う「安定」
よりも、「激しい対立」を呼ぶ。どうしても首相が憲法改正を進めたいのなら、
同日選に踏み切ったうえで、真正面から自分の考えを述べるべきだった。それを
せずに、選挙後に憲法改正のアクセルを踏む意図は何か。「解散カード」を温存した
首相が、改憲に向け最後の勝負に出るという見方もできるが、実は「改憲」の旗印を
政権維持の推進力にするしかないからではないか。

(続く)