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7月14日(日)朝日新聞東京版朝刊総合3面・日曜に想う

編集委員 福島申二   民主主義の「靴磨き」のときだ

他人を指さすときは、残りの指が自分をさしていることを忘れるな、と言った人がいる。
まさにそのとおりで、人に向ける非難や誹りは、しばしば自分自身にもあてはまる。
私もそうだが、自省の苦い思いとともにこの警句にうなずく人は結構多いに違いない。

参院選が公示された4日、安倍晋三首相は第一声でこう訴えた。

「私たちのように議論する候補者、政党を選ぶのか、審議をまったくしない政党、
候補者を選ぶのか……」。国会で憲法議論が進んでいないことを述べたくだりだが、
これなどは残りの指が自分を指している一例だろう。

政府与党こそ国会を軽んじて、議論に背を向けてこなかったか。モリカケ疑惑など
都合の悪いことや、年金など国民の関心事の質疑応答からは逃げてきた。そうした
一切を棚に上げて自分の関心事については議論か否かと迫るのだから、相当丈夫な
棚をお持ちである。

(続く)