6月28日(金)朝日新聞東京版夕刊3面 cinema

「新聞記者」   権力に屈しない気概 (秋山登・映画評論家)

国際NGO「国境なき記者団」の2019年〈報道の自由ランキング〉によると、
日本は180カ国・地域中67位だった。9年前は11位。近年、事大主義が
罷り通っているのだ。

これは現代日本の政治やメディアにまつわる危機的状況を描いた作品である。
日本映画久々の本格的社会派作品として珍重に値する。

東京新聞の望月衣遡子記者の著書「新聞記者」に触発されたというフィクションである。
本筋は架空ながら、私たちの知る現実の事件を合わせ鏡に、寒気立つ光景を映し出す。

東都新聞社に「医療系大学院大学新設」に関する極秘文書が送られてくる。
医療系大学とは何か。許可先が内閣府なのはなぜか。だれからのリークなのか。
社会部の吉岡エリカ(シム・ウンギョン)が取材にあたる。一方、外務省から
内閣情報調査室に出向中の杉原拓海(松阪桃李)は、敬愛する外務省時代の元上司が
調査室にマークされているのを知り、訝る。

(続く)