米国発の財政拡大論「MMT」 利用する動きに懸念 自民議員「自国通貨でお金をどんどん出していけば、
日本政府は絶対に破綻しない」★2

インフレにならない限り、財政赤字を気にしなくてよい――。異端の「現代金融理論」(MMT)を
めぐる論争が日米で熱い。「巨額債務を抱えるのにインフレも金利上昇も起きない日本が実例だ」。
MMTの提唱者、米ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授はそう語るが、日本の金融界
はどう受け止めるのか。

 米国でMMTの支持が広がるのは、低成長から抜け出すために財政出動を求める民主党左派陣営が中心。
景気が減速傾向の日本でも増税を控えて財政出動を求める声がある。日銀の追加緩和の手段が限られている
こともあり、MMTの議論を利用する動きが広がる可能性はある。3月の金融政策決定会合では、政策委員
から「早期の物価目標達成が見通せない中では、財政・金融政策がさらに連携して総需要を刺激することが
重要だ」との意見があった。与党からも「自国通貨でお金をどんどん出していけば、日本政府は絶対に破綻
(はたん)することはない」(自民党の西田昌司氏)との声が上がる。

 エコノミストはこうした動きに警鐘を鳴らす。野村総合研究所の木内登英氏は「国債を大量発行して『ツケ』
を将来に回しても、財政出動や将来不安から、結果的に現在の企業や消費の経済活力をそぎ、潜在成長率を
下げることにもつながる」と指摘。財政赤字拡大で財政や通貨の信認を失えば、国債の下落や通貨価値暴落の
リスクも高まる。消費増税も控え、「日本は財政拡張を選択しやすい環境。MMTが輸入され、財政拡張策
を支える理論として安易に利用されることがないよう、警戒する必要がある」と木内氏は話す。(湯地正裕)

2019年4月17日14時14分
朝日新聞デジタル
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